「焼け野が原」

 頭上に広がる、漆黒の空。散りばめられた小さな光が、自己を主張している。
 ひどく、心は穏やかだ。あんな事があったばかりだというのに。
「晴れたなぁ…」
 屋上。床の淵から膝下を宙へぶら下げて、座る。後ろに伸ばした手に体重をかけ、夜
空を見上げる。彼女を濡らしたであろう小雨は、もうその気配を消していた。

『お願い…』

 悲しすぎる願いを、自分は叶えてやる事が出来るだろうか。
「はぁ…」
 1つため息がこぼれた時だった。背後から聞き慣れた声がした。
「何やってんだ、こんな所で?」
 笑いながら、フィンクスはシャルの隣に座る。もっとも彼は、全身をちゃんと建物の
上に置いている。
「いいのか?まだ予言の週だぞ。単独行動は絶対に避けろ、って命令だぞ」
 からかう様にフィンクスが笑う。
「それを言うならフィンクスだって。3分の1の確率で死ぬかも…でしょ」
「何だよ。お前を探しに来てやった、この親切がわからねぇかな」
「そんな笑顔で言われてもね。どう見ても、暇つぶしに来たとしか見えないけど」
「厳しい事で」
 2人で顔を見合わせて、笑い合う。
「……変な気分だね」
 ふと笑いを止めて、シャルがつぶやく。
「何が?」
 半ば答えはわかっていたが、フィンクスは尋ねた。
「パクが死んだのは、ほんの数時間前の事。なのに、オレたちは笑ってる。何事も無かっ
たかの様に」
「…じゃあ、泣き叫んで悲しむか?」
「…無理だね。それは、今すべき事じゃないし」
「それにンな事、望んでないしな、アイツ」

『私で、終わりに……―――――』

 今すべき事は、彼女の願いを叶える事。悲しむのは、後でいい。きっとその頃には、
悲しみも忘れられているだろう。
「信じられないよねぇ」
 空を見上げながら、シャルがぼんやりと微笑む。
「オレたちは“史上最悪の盗賊団”と恐れられる“幻影旅団”だよ。それがたった4、
5日で2人死んで、もしかしたら後3人死ぬかもしれないなんて」
「だよな。やっぱ、一気に来るとキツいよなぁ。3年前も2人代わったけど、今回とは
明らかに場合が違うしな」
「うん…。何か、いるべき人間がいないと、こたえるよね」
 複雑な表情で、シャルは返す。己の気持ちに整理をつけようとしている様に。
「意外だな。まさか、お前からそんなしおらしい言葉が飛び出すなんて」
 単純な感想を、フィンクスがからかいを越して述べる。
 その事に、シャルは先ほどの笑顔を取り戻す。
「失礼な。オレは昔から、繊細でか弱く、心優しい良い子だと評判…」
「だった記憶は無いぞ。どこ探しても」
 呆れるフィンクス。
「知らないだけだよ。フィンクスのいない所ではそうだったの」
「ほぉ〜。ンな評判、誰からも聞いた事が無いが…誰の前でそうだったんでしょうか?」
「さぁ?それは永遠の秘密だよ」
「あのなぁ」
 いい加減にしろ、とフィンクスも笑う。
「いや、あの2人が死んだのはこたえるよ。だって、ウボォーもパクも、オレがどっかの
誰かさんにイジめられた時、庇ってくれたり、慰めてくれたりで。特にパクなんか、オレ
が泣き止むまでずっと手を握っててくれた事もあったし」
 恥ずかしかった過去も、今は良い思い出。
「ソイツを叱ってもくれたなぁ。そうだね。ソイツの名を仮にフィンクスとでもしようか」
「どうせオレは意地が悪いよ」
「本当だよ。散々イジメられましたー」
 笑い声が辺りに響く。
 けれど、長続きはしない。その一瞬は可笑しい事だと思っても、すぐに“何故、自分は
笑っているのか”と疑問が勝ってしまう。
「…………」
 笑い声に続く無言が、それをより一層強調してくる。
「あ、のさ」
「ん?」
「ウボォーも、そうだったんだろうね」
「……」
「ウボォーも最期、自分の命よりも、オレたちを優先したんだろうね」
「当然だろ」
 特攻が仕事だからではない。彼を知っているから、その最期の思いを容易に想像できる。
「あんなに、目標に向かって頑張っていたのに。あんなに、楽しそうに笑っていたのに…」
「責任感じてんのか?」
「…まぁね。オレの裁量ミスで、オレの所為でウボォーは全てを失ってしまったからさ。
あの時、オレだけがアイツを救えたのに、オレは見送ってしまった」
 自嘲気味にシャルは微笑む。
「ウボォーが死ななければ、パクが死ぬ事もなかった。死の運命を呼び寄せたのは、誰で
もないオレだろうし」
 己の手を夜空に重ねる。救えた命を、この手は掴もうとさえしなかった。
「だからンなしおらしい事は、お前には似合わねぇって」
「ぅわ!?」
 明るい笑顔でフィンクスが、シャルの頭を押さえる。
「そりゃ、全部テメェの所為にした方が楽なのはわかるけど、違うだろ。パクの記憶の中
に、お前への恨み言がカケラでもあったか?お前に責任感じてくれって、アイツが願って
たか?ウボォーもそうだ。お前が全てを奪った、なんて絶対思わねぇよ」
「…………」
「だってそういう奴らだろ。どうでもいい命なら、いくらでも奪えるくせにさ」
「…………」
「ん?どした?」
 無言を保つシャルを、不思議そうにフィンクスが首を傾げる。
「まさか、このオレがフィンクスに諭されるだなんて…。その事がショックで…」
 泣き真似までして見せる。
「悪かったな、オイ」
「あはは。ウソ、ウソやだなぁ、もう」
「いーや、今のは絶対本気だった!」
「ごめんって。機嫌直してよ」
「ったく」
「ハハ…ッ」
 笑おう。いつもより、楽しく笑おう。大丈夫だと伝える為に。それはきっと、遺され
た者の役目。
「あのさ、ちょっといい?」
「何だよ?」
 まだ声を零して笑いながら、シャルが口を開く。
「旅団が出来た時の事、覚えてる?」
「当たり前だろ」
「あの当時はさぁ、気の置けない仲間ばっかりの集まりで、結構わくわくしたんだよね。
何か、ちょっとしたサークル活動みたいで」
「サークルにしちゃ、ぶっそう過ぎだけどな」
「そりゃそーだね」
 懐かしさを含んで、シャルは瞳を細める。今でも、昨日の事の様な思い出に。
「でさ、オレ…自惚れてたと思うんだ」
「ん?」
「ずっとこのメンバーで行ける、って。団員交代の掟なんて形だけで、適用なんかされ
ないんだろうな、って。今にしてみれば恥ずかしいけど、自分は強いと思ってたし」
 あの頃の自分など、今の自分であれば容易く殺せる。
「それが気がつけば、あの頃のメンバーはもう、半分しかいない」
「…しょーがねぇだろ。弱い奴は殺されても仕方ない」
「奪うなら、奪われる覚悟を。…ふふ、オレだって、世界の掟に意見する気は無いよ」
 でもね、とシャルは続ける。
「ふと思っちゃった。もし、あの頃に戻れる方法があったら…オレはどうするのか、っ
て。今の力と記憶を従え、あの頃に戻れるとしたら…って。フィンクスだったらどうす
る?」
「戻る」
 あっさり。フィンクスは即座に、簡単に言い切った。意外なほど。
「それはつまり、シズクたちとは出会えなくても良いと?」
「いや。でも戻れたら、アイツら死なせずに済むし。ずっと、お前の言うサークル活動
続けられるだろ。それにどの道、シズクたちとは出会ってんじゃねぇ?同じ世界に生き
る者同士なんだし」
「あ、そうか」
「だろ?少なくとも死なずに済む奴が出て、その方がイーじゃん」
 この上ない最良の意見と、自信に満ちた笑顔で答える。
「死なずに…か。別に死ぬのが怖いって訳じゃないのにね、オレも皆も」
 まぁ、そうでなくては、誰もA級首の旅団員などにならないだろうが。
「けど、うん。破滅主義じゃないよね。死にたがってる訳じゃないし。むしろ、同じ死
ぬなら誰かの為が良いとか思ってるし」
「でも、最後の1人にゃなりたくねーんだよな」
「そうそう。どこかで、遺されるくらいなら遺したいって願ってる、ワガママ集団」
 どれほど残酷でも、決して消えない傷を残して逝きたい。誰かに、自分の死を悲しん
でもらいたい。
 だからきっと、彼らは幸せだったのだ。
「オレも、今のタイミングで死んだら…ヒーローだったり?」
 おどけて、自らを指さして笑うシャル。なら、と一方、呆れるフィンクス。
「シャレになんねぇだろ。死の予言確定組が」
「死なないよ、あの忠告守れば。ま、旅団の為ならいつ死んだって…」
 構わない。そう、笑顔で口にするつもりだった。
「…………」
 ハッと何かに気付き笑顔を失って、シャルは魔法にかかった様に動作を止めた。
「どうした?」
 不思議そうに、シャルの顔を覗き込むフィンクス。
「ねぇ…」
「ああ」
 微かに震える口唇が、言葉を紡ぎ出していく。
「団長はまだ…パクの死を知らないんだよね…」
「予感は、してるかもしれねぇけどな」
「けど信じてはいない、ってトコかな。団長が戻って来たら、誰かが伝えなきゃ…」
 嫌な仕事だ。そう、2人は理解する。
 再会の喜びを打ち消して尚余る、絶大な悲しみ。
 いくら死に慣れていると、仲間の死さえ簡単に受け入れてしまうとは言え、その死を
口にするのは、あまり気分の良い事ではない。
「…死にたくないな、オレ。団長が戻って来るまでは」
 それ以外なら、死を享受する事など平気なのに。
「何、言ってんだよ。当分、誰も死なねぇよ。縁起でもねぇ」
 変な事言うなよ、とフィンクスが肩をすくめてみせる。シャルも口の両端を少しだけ
上げて、返す。
「そうだよね。オレたちは、“旅団”だし。それに…」
「それに?」
 シャルの口が止まる。
「……やっぱ言うのよそうかなぁ」
「ちょっ、オイ!気になるだろ!」
「だってフィンクス、口が軽そう…じゃなくて、実際軽いからさ」
「そんな事ねぇよ!バラせるギリギリまでしかバラさない主義だ!!」
「うわー、サイテー」
「お前なぁ…」
 いいから早く言え、とフィンクスの視線が訴えていた。シャルは、少し寂しい笑顔を
返事に代えた。
「……泣くんだ、あの人」
「“あの人”って…団長?」
 小さく、シャルはうなずく。
「泣くんだ、あの人、“手足”が死ぬと、声もあげずに泣き叫ぶんだよ」
「……マジで?」
「マジで。だってオレ、見ちゃったから」
「団長が泣くとこ?」
「うん」
 シャルの脳裏に、その頬に涙を伝わすクロロの姿が映る―――――。

 

 あれは、“手足”の欠けた夜。
 それは、初めての夜ではなかったけれど。
(また1人、新しいのが入るのか…。う〜ん、今度はどんな人なんだろう?)
 ホームの暗い通路を歩きながら、シャルは思いにふける。
 いつしか、親しんだ仲間の死にも慣れてしまっていた。しかし、
(また、比べちゃったら嫌だなぁ…)
 どうしても、喪失感に似た感情が湧き起こってしまう。
(そう言えば…)
 ふと、足を止める。
(団長って、全然悲しそうな様子を見せないなぁ…)
 立ち止まって、改めて考える。
(いや、でも、頭が動揺を見せるのは、帝王学に反するしなぁ。けど、そんな遠い関係
じゃないし…“クロロ”としてこう…。いや、別にオレの前で、って訳じゃないけど。
むしろ、オレに来られても困る…)
 ぐるぐる。頭の中で、様々な思考が飛び交っては消える。再び、シャルの足はゆっく
りと帰路を辿り始める。
(…………。結構、平気なのかな…?)
 幼い頃から知っているクロロとは別人にさえ思えてしまうのも、今日みたいな事があ
るからだろうか。
(…じゃあ、例えばオレが死んでも…クロロは悲しんでくれないのかな…?)
 まるで哲学の世界だ。どこにも、答えが見つからない。
 シャルは、この夜には縁起でもない考えに、軽く苦笑する。
「あ」
 苦笑が止まる。
「書類忘れた」
 自宅に持ち帰って編集しようと思っていたのに。
(うわぁ〜。やっぱ、気にしてるんだなぁ、オレも…)
 久々のミスに、呆れながら引き返す。
 シャルが足を止めたのは、目的の部屋がすぐ近くの時だった。
(…あれ?)
 扉の隙間から、薄明かりが漏れている。それと、わずかな気配も。
(誰だろ?珍しい)
 何だったら、からかってやろうと隙間から中を覗き込む。
(――――――)
 瞳を大きく開き、シャルは息を呑んだ。
 信じられない光景が、予想だにしなかった光景が、目の間に広がっていた。
「……っ。……」
 片手で顔を覆って、クロロが手を濡らしていた。
「っ、……!」
 覆う手を払うかの様に見上げられた顔も、確かに濡れていて、瞳からは止めどなく涙
が零れていて…、クロロが泣いているのだと確信するには十分だった。

 平気だと思っていた。
 少しも、気にする風がないから、仲間が、“手足”が欠ける事など何でもないんだと、
そう思っていた。
 そう、思っていたのに。

 シャルは、気付かれない様に気配絶って、その光景を心に刻み込んで、場を後にした。

 

「オレさ、あの時、何を言えばいいのか、何をすればいいのか、わからなくて」
 相変わらずの笑顔を混じえて、シャルは続ける。
「ただ、もう2度と見たくないとは、思ったなぁ」
 シャルの言葉に、フィンクスは静かに耳を傾けていた。
「だから多分、あの予言詩を見た時も、団長は泣いたんだと思う」
 自分のよく知る、クロロに戻って。
「最後まで、ウボォーは生きてる、って信じてただろうし。頭ではわかってて、もしも
の時まで考えるくせに、1番最後まで、確かな証拠を目にするまで、“手足”の死を認
めたがらないんだもん」
 ねぇ、と笑いかける。が、
「……って、何でずっと黙ってるのさ。反応ないと、オレ、恥ずかしいじゃないか」
「あ、いや、悪い。ちょっと意外だな、と思ってさ」
「まぁ、初めて見た時は、オレも夢だと思った」
 その後も、何度か見たけれど。
「…やっぱ、それってさ、頭が1番痛ぇって事なのかな?」
「え?」
 神妙深い面持ちで、フィンクスが唐突に言う。
「だって、オレたち泣かねぇじゃん。そりゃ、ウボォーと1番仲良かったノブナガは泣
いたけどさ。お前の話聞いて、やっぱ“手足”が千切り取られるのって、頭が1番痛ぇ
んだろうな、って思ってさ」
「……そうか…。“頭”だもんね、旅団の。いくら、すぐに生え変わるからって、痛み
を感じない事は、無いもんね。……痛いんだ。そっか、痛いんだ。そっか、そっか…」
 なら。シャルはもう1度、願いを噛みしめる。
「フィンクス、オレ…」
「ん?」
「死にたくない。今、今だけ、団長が戻ってくるまでの間だけ、何があっても死にたく
ない」
「シャル…」
「その間だけ、期間限定で無様に生に固執しちゃおっかなぁ」
 最後は、冗談っぽく閉める。
「ばぁか」
「えっ?この、旅団1の頭脳を誇るオレに対して、そんな…ッ」
(コイツは…)
 拳を握って、怒りを抑える。年上としてのプライドで。
「それはオレも、アイツらも同じだっての!ったく、笑ったり落ち込んだり、お前って、
忙しい奴。目の前で無理されると、何か信用されてねーみてぇだろ」
「フィンクス…」
「溜めてないで、吐き出しちまえよ、今ぐれぇ。陽が明けたら、普段の冷静なサブリー
ダーに戻ってもらうんだぞ」
「…じゃあ、最後に聞いていい?」
 明るさの欠けた笑顔で、フィンクスへ問い掛ける。
「結構、ぐるぐる考えるんだ。パクの記憶もらって、特に」
「…どうぞ」
「あのさ、ヒソカって、どうだったのかな?」
「何が?」
 確かに吐き出せとは言ったが、あまりにも予想外な問いに、フィンクスは声を高くし、
全身で驚きを表していた。
 面白いと心で楽しみつつ、シャルは続ける。
「いや、ヒソカは3年も旅団だったでしょ。…楽しかったのかな、と思って。少しは、
“団長と戦いたい”って狙いを忘れて、旅団である事を楽しく思ってくれた事が瞬間でも
あるのかな、と」
「お前…」
「?」
「変な事考えすぎ。律儀すぎ」
 バサリと切って捨てるフィンクス。
「大体、今回の責任の一端は、アイツにあるようなもんだろ〜?」
「まぁ、それはもっともな事なんだけど」
「だったら、何で?」
「オレはマチやシズクと違って、能力的に必要とされる事もないし、ヒソカはよくサボッ
てて、あんまり付き合い無かったからってのもあるけど、ヒソカの事、改めて考えるとよ
く分かってなかったのかな、と。だからヒソカ、躊躇い無く旅団を売っちゃったのかなと
か、もう少し気をかけて仲間ハズレにしないようにすれば良かったかなとか。こう、幼稚
園の先生的悩みが、さっき言ったみたいに結構ぐるぐると」
「サブリーダーとして、職業病に近いもんがあるぞ、それは」
 先ほどからずっとの呆れと驚きに、フィンクスは軽い頭痛を覚えていた。
「ま、楽しかったんだろ。ホントに嫌なら、口も聞かねーだろ。口聞いても、正直に敵意
…つか殺意を飛ばすヤツだったし」
「なるほど。ま、でもヒソカの事は、マチに聞いた方が良かったかも」
「ああ、そうだ…」
 ハッと気付く。
(だったら言うなよ、オレに…ッ!!)
「?」
 この笑顔が、憎たらしいったら。
「……これで気が済んだろ。悩みも解消。もう疲れたし、夜明けもすぐだし、オレ、戻っ
て寝るわ…」
 フィンクスは立ち上がると、その場を去ろうする。
「うわ、冷たい。親切なお兄さんじゃなかったの?」
「…………」
「……ごめん」
 真剣な瞳でフィンクスを見つめて、シャルは微笑む。
「本当は、オレのグチに付き合ってくれて、すごく感謝してる」
「シャル…」
 元の位置に、フィンクスが腰を下ろす。
「多分オレ、こたえてるんだよ。だって、この数日で3人も旅団からいなくなって、団長
も…しばらくは戻って来れない。連絡もつけられない。……寂しいんだ」
 セリフに合わず、明るく笑うシャルの横顔を、ようやく顔を除かせた朝陽が照らした。
 もう、夜が明ける。
「そうだよ。だって、ずっと、あのメンバーで行けると思ってたんだもん」
 笑顔で、シャルが両腕を頭上に、背筋を伸ばす。
「どこまでも、行けるような気がしてたんだ。…だから」
 本当は、このまましばらく、じぃっとしたいくらい。
「寂しい」
 そのまま身体を後ろへ横たえて、まだ紫を保つ空に目をやる。

「寂しいなぁ」

 

 団長
 貴方の涙を見た時 オレは安心したんです
 オレにも、オレが死んだ時

 泣いてくれる人がいるんだ、と

 だから、せめて貴方が戻るまで
 オレは生きていたいと思うんです
 貴方より掟を選ぶオレだけど
 やっぱり誰かに
 オレだけの為に泣いて欲しいですから

 団長
 遠すぎる空の下 貴方もどこかで

 同じ朝陽を見ているんでしょうか…―――――――――

END  

 

・後書き
 いかがでしたでしょうか?久々のシリアスです。ネタ自体は、物凄く前(5月)に出来ていたんですが;
シリアスは期間が開くと辛いです。何か、恥ずかしくなってくるんで。
タイトルは、そのまんまですね。「焼け野が原」(Cocco)。曲も歌詞も好きです。CD買いました。
このSSとあわせる時は、歌詞を詳しく見ちゃいけません。何となくで見れば、何となく合って見えるはずです;
 ただ、団シャルでは無いですよ(苦笑)あくまでノーマル!!ノーカップリング!!(←必死;)
 では、今回の後書きは趣向を変えて、執筆語録を一部載せてみましょう。

「恥ずかしいのは、オレだと思う」←シャルの「恥ずかしいじゃないか」に対し。それ書いてる本人なので。
「閉めるか、このHP」←表現が思い浮かばず、ネタにつまり、更に縛睡してしまい、かなり追い詰められた
 超ネガティブ状態でぶっ放した、この冬1番の問題発言。スミマセン、閉めないです。
「そうかなぁ?」←フィンクスの「ウボォーと1番仲良かったノブナガは〜」って所で。時川さん、酷すぎ。
「オレ、シリアス向いてないかもしれん」←書いてる途中にふと。オリジ小説が、シリアス多いだけに。
…他にも、結構あったりしますが、こんな所です。バカ丸出しですねー;

 しかし、あれだけ「死にたくない」言わせておいて、ピンチに凄く平然と挑まれたら、たまりませんね;
そもそも、ピンチにすら遭って欲しくないんですけど。無理だろうな…入った以上…話的に;
 ちなみに時川は、自分の死を誰も悲しんでくれない事が、1番の不幸だと考えております。

 それでは、パクとウボォーの冥福を祈って…。以上、彼ら(主にパク)の追悼SSでした。