「シャル君と一緒」 クロロ。史上最凶の悪名高きA級首盗賊団“幻影旅団”団長。 シャル。同じく“幻影旅団”サブリーダー。 2人は幼なじみで、現在もその相性の良さは、良い意味で旅団を引っ張っている。 団長とサブリーダー。気の置けない親友。 だが今日という日に、クロロはそんな2人に新たな関係を加えようとしていた。 それは、“恋人”。 ずっと、クロロはシャルに想いを寄せていた。 可愛く、優しく、頭もよく爽やかで、気が利いて手先も器用なシャル。 そんなシャルが、クロロは何より大好きだった。 「…シャル」 「何ですか、団長?」 2人きり。草木そよぐ緑と爽やかな風の中、木漏れ日が照らすのは、クロロとシャル だけ。 クロロは必死で自らを奮い立たせる。 今こそ、想いを告げる時。2人の仲を、更なる発展へ導く時。 クロロは勇気を伴い、聞いた。 「オレの事…好き…か?」 隣を歩くシャルの答えが、とてつもなく気になる。シャルは笑って答える。 「はい。好きですよ」 「ほっ、本当かッ!?」 「ええ、もちろん」 ニッコリと微笑むシャル。クロロは、天にも昇る心地だった。 がしり!シャルの両手をしっかりと握る。 「なら、オレの恋人になってくれ!!」 「嫌です」 即答。 「そんなッ!?オレの事、好きだって言ってくれたじゃないか!」 「アレは団長として“好き”だと言ったんです。恋愛対象として“好き”だと言った覚 えはありません」 「そ〜んな〜ッ!!」 頭を抱え、涙するクロロ。地べたに座り込んでしまう。 「大体、オレは男を恋人に持つ趣味はありません」 追い討ち。 「シャル〜。今のお前の発言で、一体どれだけの女性ファンが傷つくことか…」 「知りませんよ、そんな事」 シャルの口調ははっきりしていた。 「それにオレは、付き合うなら“白いエプロンの似合う強くて可愛い娘”って決めてる んですから」 「うぅ…」 悩むクロロ。ココがシャル攻サイトなら、自分が白いエプロンを着て訴えるのがお約 束だろうが、ココはシャル受サイト。何より自分も“受”は嫌だ。 絶対に上手く行くと思っていたのに。 人生とは、意外なエア・ポケットが落とされているモノだ。 「それなら何で…今まで、疲れた時にお茶出してくれたり、マッサージしてくれたり、 うたた寝してる時は毛布かけてくれたり、朝はネクタイ締めてくれたり、他にもとにか く色々、尽くしてくれたんだ!?」 「貴方が団長だからです」 キッパリv 「オレは幻影旅団の団員。貴方はその団長。貴方はオレに、大きな利益をくれる。尽く した以上の見返りをくれる。だから、尽くすんです。その好循環を保つ為に。世の中、 金と情報ですから」 爽やかに笑うシャル。クロロは余計に、絶望へ追い込まれていく。 「シャル…。そんな発言してるから、守銭奴だの何だの言われるんだぞ」 「構いませんよ。オレを守銭奴と言うなら、みーんなそうなりますから」 「え…」 「マチもシズクも、念糸縫合にしても掃除にしても、ちゃんとお金取りますから。オレ だって、相手によって金かどうかは異なっても、しっかり見返り貰ってますし。人間、 ギブ&テイクなんですよ」 シャルは本当に、笑顔だった。クロロに、何を当然の事を、と言いたげな。 「じゃ、じゃあ、オレがお前に与えてる見返りって…無償の愛、とか」 めげずにそう告げた言葉は、 「違います。やっぱり、見返りは目に見えるモノじゃないと。それに、無償の愛なんて 存在しませんよ」 あっさり否定された。 「それなら、オレがお前に与えてるモノって…?」 おずおず。 「そうですね…。1言で言うと“幻影旅団・サブリーダーの地位”、ですね」 「え?」 「たった1度の簡単な仕事で、軽く数億Jの金が手に入り、サブリーダーであるオレは 実動部隊に現場指示を出すだけで、皆より多く貰える。ま、その分デスクワークとか大 変ですけど、それも1日で終わる程度ですし」 その言い切りが、逆に気持ちいい。 「それに事前調査等のおかげで自然と裏社会にも詳しくなり、貴方の会話術を傍で見聞 きし、どんな言葉の並びで人を思いのままに導き、欺けるのかを学べたおかげで、株や 投資による利益も上々。旅団を辞めても一生楽して暮らせるだけの貯金も収入源もあり ます」 「そんなぁ…」 未だ立ち上がれず、闇を背負うクロロ。シャルの1言1言が、胸を刺す。 「って事は、もしオレが幻影旅団の団長じゃなくなったら…?」 にこ…vシャルは優しく微笑んで、 「さよならでしょうか」 軽く手を振って見せた。 「そんなァッ!!!!」 ヒドイ。こんなに、想っているのに。 「むっ、昔は、いつもオレの傍にいて、オレが構うと嬉しそうに笑って、夜は同じ布団 で寝て、将来の夢は“クロロのお嫁さん”(と言いそう)だったのに…」 「人は変わる生き物です。いつまでも、昔と同じではいられません」 「シャル…」 嗚呼、思い出はいつの日も美しい。 「なら…オレかクモか、っていう状況になったら…」 「クモを選びます」 当然でしょう、と付け加えて。 「だって、場合によっては“頭”を切り落とせ、っていう掟でしょう?」 「それはそうだが…」 躊躇ってくれてもいいのに。 「でも、オレの事を助けに来てくれても罰は当たらないぞ」 「場合によりけりですね。団長と団長を救出する際のリスクを比べ、リスクの方が大き ければ、オレが新たな団長を務めるだけです」 「……」 ポカーンと口を開けるだけのクロロ。そのショックは計り知れない。 「あ、でもオレが団長になると責任とか色々、面倒な物が付いてくるんだ…。オレ、気 楽なサブリーダーがいいし…」 しゃがみこんで、笑顔でクロロの肩を叩くシャル。 「いざとなったら、オレが新しい団長を探して立てて、支えますからv安心して下さい」 「出来ない!安心出来ない!!」 プルプル、物凄い勢いでクロロがかぶりを振る。 「ど、どうしたらオレにずっとついて来てくれるんだ?」 その瞳には、涙が溜まっていた。 「そうですね…」 立ち上がり、人差し指を頬に寄せて考える。 「やはり強くないと。幻影旅団の団長たる者、強くてカッコ良くて頭も良くて責任感が 強くて、仲間に優しく敵に冷たく、確かな利益をくれる人でないと」 「そうか…」 力無く、クロロが立ち上がる。 「それがお前の理想なんだな」 「“団長”としてのですが」 「ならオレがそうなれば、いつかはオレのモノになってくれるのか?」 「考えてもいいですよ」 「わかった…」 わずかな沈黙。 クロロの拳に、力が甦る。力強い瞳で決意に満ちた顔をあげ、シャルを見つめる。 「オレは今から旅に出る!!」 「えぇッ!?でも、どこへ?」 「止めるな、シャル!!」 「特に止めません!!」 「お前の気持ちは嬉しいが、もう決めたんだ!!」 噛み合わない会話。 「オレは、お前の心を手に入れる為、修行の旅に出る!!!!」 頼もしい口調。クロロの瞳は、真剣その物だった。 一応ソレを支えているのは、下心に他ならないのだが。 「待ってろ、シャル!オレは…」 回れ右。夕陽に向かって、猛ダッシュで駆け出す。 「ウボォーをも越える肉体を手に入れて、帰ってくるからなぁーーーッッ!!!!」 「いってらっしゃ〜い!!」 シャルは高く大きく手を振って、片手を口元に添えて見送るのだった。 完璧な、爽やか笑顔で。 |
2日後。旅団は、アジトに集まっていた。 「ったく、団長はまだ来ねぇのか?」 呆れながら、フィンクスがもらす。 もう、集合時間を1時間も過ぎている。 「団長が遅刻かますとはなぁ…」 退屈そうに、ウボォーが天井を見上げる。 「団長はアンタら違って忙しいんだよ、普段から」 「そうよ。色々、考えてるんだから」 マチ、パクがそれぞれ笑う。 「それにしても、遅いね。シャル、何か知らないか?」 フェイタンがシャルに問う。 「ああ。団長は…」 相変わらずの爽やかさで、シャルは誰もが予想だにしていなかった事実を伝えた。 「旅に出るって」 「はぁ?」 目を丸くする5人。 「何でも、ウボォーをも越える肉体を手に入れる、って」 「はぁッ!!!?」 時が止まる勢いの5人。 「な、なな、何よそれッ!?」 慌ててパクが、シャルに言葉の意味を確かめる。 「いや、オレが“団長は強くないと”って言ったら…」 「だからって何で、そんなッ!?」 マチも信じられないと顔を青ざめさせる。 「何でも、オレの心が欲しいんだって」 「ああ、そうなんだ。……」 間。 |
「何だ、それーーッ!?」 詰め寄る5人。 「オレに言われたって困るよ。でも、結構本気だったよ。本気で、ウボォー並の筋肉を 身に付けてくる気なんじゃない」 「…………」 硬直する5人。ダメだとわかっていても、脳裏に…。 「嫌ぁあぁあぁぁッッ!!!!」 無駄な事と知りながら、耳を強くふさいで泣く。 「どっ、どうして!?アンタ、傍にいたんだろッ!?」 「うん。いたけど」 「だったら、やるべき事があったでしょ!?」 「あ!!」 シャルが、とっさに口を抑えて気付く。 「やっぱり見送りは、白いハンカチと国旗振って、国家歌って、万歳て叫びながら涙す る…じゃないとダメだよね!?」 「何十年前の光景だ、それはぁッ!?」 泣きながら、フィンクスがツッ込む。 ちなみに、56年以上前の光景です。 「オレらが言ってんのは、どうして止めなかったのかって事だ!!」 ウボォーが涙声で叫ぶ。 「え?何で止めるの?強くなるんだからいいじゃないv」 「方向性ってモンがあんだろうがよぉッ!!!!」 「そうね!特質系の団長が強化系のウボォー目指してどうするね!?」 しかし、彼らの涙の訴えは届かない。シャルは、ニッコリ笑う。 「だからこそ、いいんじゃない。特質系の団長が、念能力抜きでウボォーの“ビッグバ ンインパクト”級のパンチなんか繰り出してみてよ。まさに最強!!だよ」 想像中v 「うわぁあぁあぁぁッッ!!!!」 まさに、最凶の悪夢。 「恐い!それは恐いぞ!!」 ウボォーが脅えた様に首を左右させる。他の4人も同様の動きをしている。 「嫌ね!!そんな筋肉質な団長、嫌ね!!!!」 「どうして私たちに相談してくれなかったんですか、団長ォッ!!!?」 「お願い、目を覚まして戻って来てーーッ!!!!」 「今ならまだ間に合うからッ!!!!」 口々に切なる願いを絶叫する5人。 「どうしたの、皆?団長が強くなるんだから、喜ばしい事じゃない」 「ちっとも喜ばしくないわーーー!!!!」 その絶叫は、見事にハモっていた。 「だからどうして?」 「気づけ、お前も!事の重大さに!!」 フィンクスが滝涙をほとぼらせてシャルの胸ぐらを掴む。 「事の重大さ?」 「そうだよ!アンタもリアルに想像してみな!!ウボォー並の肉体を手に入れた団長を!!」 「あぁッ!!」 先程よりも大きな驚きが、シャルの表情に訪れる。 今度こそ伝わったはず。5人は強く祈った。が、 「今の内に団長服のサイズ、直す手はずを整えておかないと!!」 「バカーーッ!!!!」 素晴らしき、鉄の結束。 「そういう問題かよッ!!」 「だってあの服、特注なんだよ。団長が帰ってきたら、すぐに採寸計り直さないと」 「どうしてそう天然なの!?アンタって子はぁッ!?」 「え?違うよ。オレは至極、当然の事しか言ってない」 天然とは、自覚症状がないから天然なのです。 「団長もどうして…そう、極論主義なんだよ…?」 「知るかよ。昔っからそうだったじゃねぇか…」 落ち込むフィンクス&ウボォー。 「ハハ…」 「ど、どうしたのさ、ウボォー?」 「いや、この事、アイツらが知ったらどうなるかな、って…」 「!!」 息を呑むマチ。 そうだ。知らせなければならない。 団長が、ウボォー並の肉体を手に入れようとしている事を。 「絶対アイツら、オレたちと同じリアクションする」 ウボォーは確信していた。マチも、そう思う。 「…そうね!」 フェイタンが、名案を思いついたと顔を上げる。 「シャル、教えるね!団長が旅に出たのはいつね!?」 なるべく、最近であって欲しい。もちろんその祈りは叶う。 「一昨日」 間。 「一昨日ッ!!!?」 驚愕する一同。予想より、遥かに最近。 「探すね。団長を!そう簡単に、ウボォー並の肉体が手に入るはずないね」 「探すったって、団長は…」 1度消えたら見つからない。 そうフィンクスが告げる前に、 「わかった。探そう!」 マチが賛同する。 「何もせず、待っているよりマシだわ!」 パクも賛同する。 「よっしゃ!旅団の未来を守る為にも、絶対阻止だ!」 ウボォーも賛同する。 「ちょっと待てよ、お前ら!」 「何だよ、フィンクス?」 「冷静になれ!団長は、1度消息を絶ったら、絶対に見つからねぇんだぞ!」 「だからて、看過しろ言うね?」 「言わねぇさ!けど、闇雲に探しても時間の無駄だ!!」 「…わかった……」 フィンクスに諭され、冷静さを取り戻す4人。 「で、シャル」 「?何、ウボォー?」 「団長、どっちの方向に向かったか、覚えてるか?」 「もちろん!オレの記憶力を見くびらないでよ」 「じゃあ、どっちに行ったの?」 「西」 「わかった!西だね!」 マチが地球儀持ち出し、修行向きの西の地を探す。 「でも、団長探してどうするの?差し入れ?」 「止めんだよ!!」 決死の表情で、フィンクスが言い返す。 「何でさ?団長に、強くなって欲しくないの?」 「なって欲しいけど、筋肉質にはなって欲しくねぇよ!」 叫ぶウボォー。微笑むシャル。 「大丈夫だよ、ウボォー。腕相撲ランキングはウボォーが1位のままだから」 「ンな心配してねぇよ!」 「とにかく、団長に会いたいの!」 マチが邪魔するなとシャルを睨む。 「あ、団長に会いたいんだ」 何だ、とシャルが手を叩く。 「そうよ。大事な話があるの」 「なら、オレが呼んであげる」 「おー、頼む頼……」 停止する時間。 「呼ぶーーッ!!!?」 5人の声に耐え切れず、砕け散る地球儀。 「そうだよ。呼んであげる」 「よ、呼ぶってどうやって!?」 「簡単だよ。名前を呼べばいい」 「はぁッ!?」 言葉の意味が、全くわからない5人。 満面の笑顔のシャルが、スゥと息を吸う。そして 「団長ーーー!!!!」 アジトが震撼する。突然の大声に、全員が耳をふさいで悶え苦しむ。 「なっ、なっ、なっ…」 そんなバカな事で、いくらなんでも団長が来るものか。団長は、そこまでバカじゃな い。 しかし、 「シャ〜ル〜vvv」 (団長!?) 思い通りにいかないのが、人生である。 (しまった…!) 後悔する5人。 (あの人、バカだったの忘れてた…!!) そんなバカについて行き、命まで捧げてる自分はもっとバカだ。 だが、そんな彼らの自責はすぐに消え去る。 ドシドシドシドシ!!!! (えッ!?) 硬直する5人の身体。 おかしい。 足音がおかしい。 今までそんな団長の足音、聞いた事がない。ウボォーが走った時に、似た音を聞いた 記憶はあるが。 彼らの脳裏に、先程の悪夢が甦る。 まさか。旅に出てから2日。時間で言うなら48時間。そう、不可能だ。 そんな彼らの一縷の希望は、 ドシドシドシドシ!!!! 大地を軋ませる足音に踏み砕かれる。 ピタ。足音が止まる。扉のすぐ向こうに、感じ慣れた気配が1つ。 「嫌…。だ、誰か…ッ」 青ざめ、瞳には涙さえ浮かべ、パクが後ずさる。 「あ…ハ、ハハ…」 笑顔の引きつるウボォー。 シャル以外の全員が、この場から逃げ出したかった。けれど、身体が動かない。 ギィ…。扉が、少しずつ開いていく。脅える5人。 「シャル〜vvv」 (!!!?) 開いた扉の先にいたのは、言葉通り“ウボォー並の肉体を手に入れた”クロロの姿だっ た。(今世紀最も絵にしたいモノ・特別賞受賞作品) 「見てくれ、シャル!旅で手に入れた、このダイナマイトボディ!!」 (どうすりゃ2日で、あんな身体に…ッ!!!?) 涙にくれる5人。恐い。想像以上だ。 誇らしげに、50cmは身長差がついてしまったシャルを見下ろす。 「どうだ、シャル?」 笑顔のクロロ。 (絶対、シャルも止めなかった事を苦労するはず!!) いくら何でもこの団長を見て、笑っていられるはずがない。 5人の心は1つだった。 「…………」 シャルは、しばらく言葉を失い、呆然とクロロを見つめていた。 「団長…」 「何だ、シャル?」 シャルの喉が、ごくッと鳴った。 「素敵ですv」 (えぇッ!!!?) |
驚愕する5人をシャル他所に、シャルは夢見る様に微笑んでいた。両手を組み、憧れ の眼差しをクロロに向けている。 「それで、どのくらい強くなったんですか?」 「そうだな」 シャルに誉められ、心底嬉しそうにクロロが語る。 「でこピンで核ミサイル級の打撃を与えられるくらいになったかな」 (返して、オレの人生!!!!) たった2日に敗北したウボォーが、涙で床にうつぶせる。 その悲劇に、同情する4人。 「凄い、団長vそれでこそ、オレたちの団長ですよ」 「いや〜vそれほどでもないさ」 「もうv照れなくてもいいじゃないですか」 (誰か、助けて!!) 4人は今すぐこの場から逃げ出した…くはなく、他団員をこの場に呼び寄せたかっ た。 苦しみは全員で分かち合うべきだ。 「で、シャル。オレの恋人に…なってくれるか?」 「嫌です」 間。 「そ〜んな〜ッ!!!!」 泣き出すクロロ。外見と動作がミスマッチで、気味が悪い。 「オ、オレは…お前とヴァージンロードを歩きたいが為にここまで…」 (それは父親の役目だ!!!!) 目を背けながら、フィンクスが本能に従ってツッ込む。 「考えてもいい、ってオレは言いましたよね。考えた結果、嫌です」 即答だったくせに。 「オレは…お前の花嫁姿、果ては新婚旅行から夜の営みまでの想像を支えに、頑張って この身体を手に入れたのに…」 シャルの足にしがみ付いて、情けなく涙するクロロ。 「頼む、シャル!オレは、オレはずっとお前の事が好きだったんだ!!お前だって、“素 敵ですv”って言ってくれたじゃないか」 「言いましたよ。でもオレ…」 極上爽やかエンジェルスマイルを浮かべるシャル。 「筋肉質の特質系って、生理的に受け付けないんです」 その言葉が、クロロにとってトドメとなった。 (悪魔だ!!!!) 思わず5人も、クロロの為に涙を流す。 「そんな…」 がくり。力無く、肩を落とす。 「オレは…シャルだけが心の支えだったのに……」 「大丈夫ですよ、団長」 優しく、シャルがクロロに寄り添う。 「シャル…」 奇跡を信じる瞳で、クロロがシャルが見つめる。微笑むシャル。 「世の中には、3人似た人がいるそうですから。オレ似を探して下さい」 死者に鞭打ちv 「うわぁああぁぁぁッッ!!!!」 号泣しながら、クロロが走り去っていく。 「団長!」 呼び止めるシャル。 「今日の仕事の指示をまだ聞いてません!!」 「うわぁあぁああぁあぁんッッ!!!!!!!!」 バシィィン!!閉められた扉が砕ける。 「オ、オイ、団長!」 素早くフィンクスが追おうとすると、 バッシャアアァアァァン!! 流れ込んで来る大量の、水、水、水。 「コレ、涙ね!」 「じゃあ、団長が!?」 「大変!非難しないと」 「そうだよ。ここから逃げなきゃ」 けれど、上下左右から迫り来る涙。あまりの急流に、もうその場に留まるのが精一杯。 「良かったvオレの携帯、防水にしておいて」 「バカーーーッッ!!!!」 彼らの叫びが天に届いたその瞬間。 ドッ、ゴォオォオォォン!!!! 「うわぁあぁああぁぁッッ!!!!」 この日、旅団はアジトを1つ失った。 |
「…ヒデェ目に遭った」 ガレキを押しのけ、ウボォーが光を浴びる。 「大丈夫か、お前ら?」 「何とかね…」 同じくガレキを退かし、マチたちが泥に汚れた姿を現す。 「団長はドコね?」 フェイタンが、辺りを見回す。 「あ!」 パクの視線の先、細身の黒い人が見える。クロロだ。 「元に…戻ってる」 全員の心に、希望という名の花が咲く。 あの洪水が、クロロを元の姿に戻したのだ。それは、それだけクロロが泣いた事を意 味していた。 全員が安堵の吐息をもらすと、 「団長!」 悪魔の声がした。 「団長、大丈夫ですか?」 「シャル…」 泣きすぎで喉が涸れたのか、酷くしわがれた声。 「もう、これ以上…」 優しくしないでくれ。そう告げかけた時、 「好きですv」 (ッ!?) シャルが、クロロに抱きついた。 「シャ、シャル…?」 「オレの為にあんなに泣いてくれた人は初めてです。…感激です」 (そこか、お前の判断基準!?) 天然とは、常に常人の理解に及ばない言動をする者である。 「オレ、貴方のモノになります。いえ、貴方のモノにして下さい!」 「シャル!!」 シャルの身体をしっかりと抱きしめるクロロ。 「団長!!」 強く抱き合う2人。周りに、ピンクの空気が漂う。 「……なぁ、マチ」 「何、ウボォー?」 「オレ、スタッフサービスに電話するわ」 「奇遇だね。同じ事考えてた」 「オレも」 「私も」 「ワタシもね」 こうして、天然共に一連のボケを見せ付けられた5人は、疲労し果て帰路につくのだっ た。後に彼らが半年仕事を休んだ話は、有名である。 「団長v」 「シャルv」 ま、結ばれるべくして結ばれた2人、って事で。めでたし、めでたしv 「も…、勝手にして…」 END ☆ |
・後書き 団長ファンの皆様、ごめんなさい;私も団長大好きでございます; 久々の天然シャルのご登場です!!長い休暇から天然シャル君、一時職場(?)復帰vvv 最初は、天然団長と最凶シャルっぽい会話でしたが、実はシャル君も天然ver.だったという…。 哀れなのがアノ5人です。本当に、一連のボケを見せ付けられただけ!! 団長も、結構哀れだったんですけどね。嗚呼、あの天然シャルの言葉の刃が、 ボノレノフに行かなくて良かったね…(涙)“哀れ”と言ったら、今やボノの専売特許みたいなものだし(笑) ちなみに“ウボォー並の肉体を手に入れた”団長は、話書いた本人ですら、想像出来ません; 皆さんも、感覚で笑ってください。そして、脅えてみてください。 でも、↑みたいな団長でも、ヒソカは欲情出来るんだろうか…;多分、ヒソカも逃げると思うんですが; そんな団長、絶対イヤだ!!!!(←書いた本人が何を…) けど、そんな団長だったら、クラピカも誘拐出来なかったろうな…。しても失敗確定。 殴っても殴っても、本当にダメージ0で笑って「コーヒーブレイク〜」って(笑)車も妙に遅くて。 全団員一致で迎えに行くんですよ。「あの人なら、鎖も砕く」って。もしくは、シャルが呼ぶんです(笑) 嗚呼、恐い(笑)きっとVSゼノ&シルバ戦も楽勝ですよv それ以前に、ネオンに近づく段階で失敗すると思いますけどね;(絶対逃げられる;) それでは、夏の暑さに腐った脳で仕上げた作品ですが、少しでも笑いを提供できたら幸いですvvv 皆さんも、上司や同僚に恵まれなかったら、“オー、人事×2”(古ッ)ですよv(笑) |