「クモ色片想い」 旅団ホーム。その1室でフィンクス&パクは、自分たちを呼び出した張本人・クロロ を複雑な面持ちで待っていた。 「何だと思う?」 真に嫌そうな顔で、フィンクスが切り出す。別に普段も呼び出しを嫌がったりしてい る訳では決して無い。 ただ嫌な予感がまとわりつくので、そう思うだけ。 「さぁ…?でも何だか嫌な予感がする」 パクの方も、それは同じだったらしい。 「ヤダヤダ。何より呼ばれたのがオレたちだけってのが、怪しい。絶対何か災難持ち込 んでくんだよ〜」 両手で頭を抱えて嫌がる。どんなに嫌でも『団長命令』を持ち出されてしまった以上、 逆らえない。 待つ時間の長さが、益々不安を掻き立てる。 「けど、もしかしたら本当に仕事の話かもしれないし。面倒な仕事だから、嫌な予感が するのかも」 「面倒な仕事を、お前にならともかく…オレに命じるか?」 「あ」 言葉に詰まる。 「その…気まぐれやアミダクジとか…棒倒しとか…」 「そうだな、今週オレの運勢最悪だったし」 昨日に読んだ雑誌が脳裏を過ぎる。 「にしても遅ェな。ちょっと様子見に行ってこいよ」 「そうね」 フィンクスに促され、パクが部屋から出ようと扉に手をかける。 「あら?」 「んー?」 「開かない」 「は!?」 止まる時間。 「ちょっとマジか!?」 力の限り引っ張るが、鍵はおろか扉さえ壊れない。 「な、何でッ!?」 その時、ガシャン!!という音と共に室内の光源が消え真っ暗になる。突然の事態に余 計に驚く2人。 ちゃらら〜ららら〜♪ 背後からBGM。加えてスポットライト。 「ま、まさか…」 怯えつつ、2人が振り向く。 ゴゴゴゴゴゴ。 「ッ!!!?」 天井からゴンドラが下りてくる。そのゴンドラの上にはもちろん、 「…………」 呆れのみで疲労できるベタなカッコポーズを決めたクロロの姿。 「あのー…」 「待たせたな」 ポーズ決めたまま。 「この…微妙に大掛かりな登場の意味は…?」 「普通の登場じゃ、カッコ良くないじゃないか」 「まさかこの準備の為に遅れたんですか?」 「YES」 断言v 「団長ぉおぉぉッ!!!!」 涙ながら、フィンクスがクロロの襟首に掴みかかる。 「落ち着いて!落ち着いて、フィンクス!!」 必死で止めるパク。 「何だ、待たされた事がそんなに不満か。オレは1秒だって遅刻してないのに」 クロロが指を鳴らす。すぐに明かりが室内を照らした。 「何言ってんだよ!オレらは時間通りに来て、8分も待たされたの^!!」 「そうです。私たちはちゃんと時間通りに来ました」 2人の反論にもクロロは平然とする。 「それはお前らの時計が速いんだ」 「何でンな事を言えんだよ?」 「オレがお前らの全時計を進めたからだ」 キッパリv 「アンタは目立てりゃ、それで良いのか!!!?」 「当然!!!!」 どキッパリv ある意味、快いまでの潔さだった。 |
「で!オレらを呼んだ理由って何だよ!?」 フィンクスは不機嫌そのもの。 「よく聞いてくれた。実は…深刻な悩みがあるんだ」 「悩み…ですか?」 「ああ」 真剣な表情となったクロロに、パクも真面目に尋ねる。 「何でしょう?私たちで力になれるなら、どうぞ」 「そのつもりだ。実は…」 「実は?」 「シャルが好きなんだ」 「はい?」 あまりの予想外さに、表情の真剣さが崩れる。 「シャルって…あのシャル?同じ旅団の!?」 「それ以外に誰がいる」 「『シャル』って呼称だけなら何人でも」 「愛しの幻影旅団サブリーダー・シャルナークだ!!!!」 力を込めて、クロロが叫ぶ。 「嗚呼、シャル…。あの華奢な身体、細い足首、抱きしめたなら折れてしまいそうな腰、 服の合間から時々覗く白い鎖骨…vその上、髪はさらさら風を受け、いつもほのかに良 い香りvその微笑みは天使の様で、語る声は女神の様で…vv」 うっとりと、シャル語るクロロ。 「相当、脚色が入ってるな」 「恋の力って絶大ねー」 呆れるべきか、感心するべきか。 「ちょっと怒った時に膨らました頬がまた『ぷにッv』と柔らかくて、うっかり携帯落 とした時の慌てた表情とか抱きしめたいほど可愛くて、実は最近体重が2K増えたのを、 元々体重も体脂肪も必要ないのに気にしてて、今はシャワーよりジャパニーズスタイル の風呂に夢中で、好きな温度は39度。しかも風呂上り用ビン牛乳セットを購入して。 風呂上がりのほんのり上気した頬に肌が『押し倒しちゃうゾvコイツぅv』って位に魅 力的で〜vvv」 腕まで振って、機嫌良く語る。 「マニアだな」 「ストーカーの域でしょ」 呆れさえ通り越して、無表情な2人。 「あまりの愛しさに、『シャル・その魅力の全て』と言う論文まで書いてしまった程だ」 ちなみに9万とんで6ページv 「いつでも学会に発表する用意がある!!」 「せんでいいから」 ストーカーすら超えている、と確信する2人であった。 |
「それで本題は?シャルへのノロケってオチじゃねぇだろ?」 「当たり前だろ。だったら暇な奴全員集めて語ってやるさ」 「総辞職されるから止めろよ」 「ハハv冗談上手いなぁ、フィンクス」 (コイツ…ッ!!) パクが居なければ、きっと殺りにかかってた。 「とにかく!この度オレは、シャルへの溢れんばかりの愛を悟った訳だ。だが正直…初 恋で、どうしたらいいのか…」 そう語るクロロの表情は、先程とはうって変わって切なげだ。 「そこで、保護者組にして『大人の恋愛』要素を持ったお前ら2人に、恋愛指南しても らおうと呼び出したんだ」 もっともそうに、クロロはようやくの本題を説明する。 「ンなのパクだけで良いじゃねぇか。マチとか」 「マチはまだパクほど歳が行ってないからな。ココはパクの様に、人生経験も歳も豊富 に重ねてる女性が適任だと思ったんだ」 「ああ、なるほど!確かに女じゃ、経験と歳は格段と豊富だよな〜」 「そうだろ、そうだろ」 明るく、思いっきり納得して談笑し合うクロロとフィンクス。その背後、 グシャ、バキ!!!! 「……ウチの女は強くて恐いな…」 「全部アンタの人選じゃねぇか…」 床に倒れる2人の姿は、見るも無残な状態だった。 |
再び仕切り直し、改めて恋愛相談。 「それで、何を聞きたいんですか?」 「自分を『義理以下』と言った人間との最短恋愛ルート」 「はい?」 パクだけでなく、話半分で聞いていたフィンクスも呼吸を飲んでしまう。 「ちょっと待てよ!!幼なじみで旅団の頭とサブリーダーってだけでも『義理』以上だろ!! それにあのシャルがそこまで……って、まさか」 「シャルに何かしましたね」 ギクv 「おお、見事な分けゼリフ」 「団長!!!!」 ピッタリ息の合った怒声が、クロロの脳髄を直撃する。それに分けゼリフでもない。 「何したんですか?」 2人の疑いの眼差しが、グサグサとクロロに突き刺さる。 「そ、そんなに変な事じゃない」 動揺を見え隠れさせながら、否定する。 「じゃあ何で、あのシャルが『義理以下』とまで言うんだよ?」 「けど『未満』じゃなくて『以下』だから、思いっ切りポジティブに考えるとギリギリ で義理な訳で!!」 「ややこしい言い回しすんなよ」 相変わらず、他人を呆れさせる天才だと思う。 「それで、何をしたんですか?」 「ちょっと告白しただけだ…」 「嘘つくなよ。シャルが告白されたぐれぇで、そんな怒るかよ」 「嘘じゃない!!本当に告白しただけだ!!シャルに触ってもないんだぞ!!!!」 「信じ難ぇ」 あくまで疑惑の目を、クロロに突き刺す。先程のストーカー越え言動を考えると、余 程のセクハラをかましたとしか思えなかった。 「本当だ!!だって『義理以下』って言われた後、シャルを引きとめる為にしがみ付こう として、殴り飛ばされたんだから!!!!」 (何だって!!!?) 驚愕。 「あの、団長…?」 「何だ、パク?」 「どんな告白だったのでしょう?」 「それは…」 クロロは思い出す。シャルから『義理以下』を引き出した告白を。 「オレの子供を産んでくれ」 (超特級ストレート!!!!) 驚愕再来。 「そりゃシャルも怒るわ…」 「それ以前にシャルは男なので、育てるのはともかく産むのは…」 「大丈夫だ」 「え?」 事も無げに、クロロは言ってのける。 「そんな事も考えずに、このオレがシャルにプロポーズするものか。欲望一直線人間で もあるまいし」 「いや、欲望一直線人間だろ」 「今や裏社会は髪の毛1本からクローンが作れる3歩前」 「聞けよ、人の話」 苛立つ。けれどクロロは、そんなフィンクス無視して話を続ける。生来の語り好きも 手伝って。 「ところがオレは、この天才的な頭脳とシャルへの愛が相まって、その技術を8歩も進 める事に成功した(理論上)」 語るクロロは上機嫌の極み。 「そして子供とは、両親の遺伝子をそれぞれ半々に受け継いだもの。つまりオレとシャ ルの遺伝子を融合させ、そこにクローン技術を適用すれば、完全なる2人の愛の結晶v な訳だ」 夢見心地にうっとりとクロロが微笑む。その脳内にはシャルとのあたたかな家庭。 「…………」 今にもふわふわ漂いそうなクロロに、ただ視線しか送れない大人組2人。 「感心して声も出ないかv」 「幸せな思考回路で羨ましいよ」 「そうかv」 本当に。皮肉さえも誉め言葉に変換できるのだから。 「あの…それをシャルに…言いました?」 どこか祈る様に、パクは震える声で尋ねる。 『気の置けない親友』と思っていた男(同性)から、いきなり『子を産んでくれ』と プロポーズされ、更に己の意思と関わり無くその準備が出来ていると嬉々とした表情で 告げられたら…シャルがクロロを『義理以下』と殴り飛ばしたのも、わかる気がする。 「どうなんですか?」 もし、言われたとしたら。 「ああ、言った」 (やっぱり!!!!) シャルへの同情100%に涙する。 「ンな事言われりゃ、誰だって怒るわぁあぁああッ!!!!」 「よ、良かれと思って…」 襟首をフィンクスに掴まれながら、情けなくうなだれるクロロ。 「パク…そんなに怒る事なのか?」 「殺されなかっただけ、ましですね」 「うぅ…シャルぅ…」 あくまで襟首掴まれながら。 |
「本当に…なんて早急…」 痛む頭を押さえるパク。 シャルの怒りを治めるのは容易ではない。元が強い自制心の持ち主だけに、爆発した 怒りをその記憶力から、いつまでも引きずってしまうのだ。 「絶対ェ無理だよ。恋愛どころか、仲直りだって出来るかどーか。帰ろーぜ、パク」 「でもシャルが怒ったままなのは…私たちにとっても都合が悪いし…」 「そうだ!お前らにとっても都合が悪いんだぞ!!それに可愛い弟的存在がこんなに悩ん でるのに見捨てるのか!?」 「何でそんな偉そうなんだ、アンタ!!!?」 「団長だからだ!!!!」 どキッパリv 「あーもう、無理。絶対ェ無理!観念してシャルに殺されて来い」 なげやる。恋愛相談に仲裁。ただでさえ苦手な分野にここまで付き合ってやって来た のだから、無理もない。 「殺されたくないから、シャルをオレの次に1番怒らせていたお前を頼ってるんじゃな いか!!」 「ガキの頃の話だろ!!今は恐いから怒らせねぇよ!!!!」 「どちらも言い切って良い事じゃないわよ」 「オレは悪くねぇ」 「もう、子供じゃないんだから…」 優しく、パクが苦笑してみせる。嵐の中の穏やかな光。ズシリと圧し掛かる疲労感が ほんの一時、忘れられた瞬間。 「ああ、そうだ、忘れてた」 ポツリ。何気ないクロロの発言を、思わず耳をダンボにして聞き取る2人。 「何を…?」 出来れば、どうでもいい事実であって欲しい。けれど運命とは、何よりも残酷だ。 「プロポーズしたの、9日前の話だから」 (9日前!!!?) 流石にもう、驚く事はないと思っていたのに。 「ま、まさか…その9日間…シャルに…」 「ずっと求愛してた」 「その度に…」 「オレは死ぬかと思ったよ」 間。 「パク、逃げよう!!フェイタンたちにも声かけて、全員で逃げよう!!!!」 「無理よ!!だって相手はシャルなのよ!?」 「ちなみにその9日間を歌にしてみた」 「はぁ!!!?」 『クロロン愛のうた』(ピ○ミンのテーマで) 作詞:クロロ=ルシルフル 僕の名クロロン シャルだけを愛してる 今日も尾行(つけ)る・見つめる・迫る・そして、飛ばされる 色んな求愛している この☆で 今日も朝這う・昼這う・夜這う・そして、死にかける 冷たく無視られ また追って 投げられて でもシャルの愛「諦める」とは言わないよ 「…………」 呆然となるフィンクスとパクを他所に、感極まって泣くクロロ。何故ならシャルも好 きだが自分も好きだ。 「切ないだろ?」 「アンタを団長に持ったオレらがな!!!!」 つくづく己の上司運の無さを恨む。 「大体、何だよ『クロロン』て」 「何となく可愛い」 まず一人称が『僕』ではない。 「この歌でビリオンヒット狙えるか?」 「無理です、原曲もそこまで言ってませんから」 「てか、ストーカーの歌だな、コレ」 「失礼な。純粋な愛の歌だ」 「勘違いしてるようだから言うが、『純粋』は決して誉め言葉じゃねぇからな」 純粋=澄み、穢れがない・完全。 「なのにどうして、シャルはわかってくれないんだ…」 「だから人の話を聞けよ」 「わかれって言う方が無理です」 もちろん無視するクロロ。 「こんなに愛してるのに」 (!!!?) いつの間にやら、その腕の中にはシャル等身大パネル。 「こはなぞ?(訳:これ何?)」 「昨夜、一緒に寝た」 ギュウゥvv 「そんなんやってっから、シャルに嫌われんだよ!!!!」 「寂しかったんだ…」 「子供か、アンタ!!!?」 「手段は問わない。シャルの機嫌を直す方法を教えてくれ」 (なッ!!!?) この開き直りが、やはり頭と言うべきか。 |
「何が有効だ?」 「それがモノを教わる態…」 「まぁまぁ」 パクがなだめる。このままクロロペースに流されても、百害あって一理なし。 「やはり贈り物では?贈り物で気が良くなった所に、謝り倒すんです」 「シャルが喜ぶ贈り物と言うと…」 思案する。その後に、クロロは1つの答えに達した。 「金だな!!」 「え!?いや…ッ」 ある意味、大正解v 「つか、オレら全員嬉しいよ」 何故なら彼らは幻影旅団。 「もっと…誠心誠意がこもった物を…」 「じゃあ、誠心誠意のこもった金」 「けどそれ、盗品売ったか強奪したかした金ですし…」 「金に綺麗も汚いもない!!」 真顔で、精魂込めて言い切るクロロ。ズビシィ!!と指さして。 「正論だけどストーカーもビックリ発言した奴に言われると、嘘くせぇ」 「深く考えるな。とりあえず次、言葉は?贈り物に添える言葉」 「そんなの自分で考えろよ」 冷たく突き放す。当然クロロはムッとなる。 「良いじゃないか!!パクに何て言って付き合い始めたかを教えるくらい!!」 「ッ!!!!」 途端に咳き込むフィンクス。パクも顔を真っ赤にして呼吸を忘れる。 「ち、ちち違う!!べ、別に付き合ってなんて…なぁ!?」 「そ、そうです!!誤解です、誤解!!!!」 慌てて首を左右に振る2人。 「何だ、そうなのか?」 「そうですッ!!!!」 息を合わせて、力の限り否定する。 「何だ、そうか。そうだよな。フィンクスはフェイタンと、パクはマチやシズクと一緒 にいる時間の方が多いもんな」 「そうそう。たまに話す程度」 「年齢が近いだけです」 「スマナイ。オレってばてっきり勘違いしてたじゃないか」 笑顔で納得のクロロに、この時ばかりはその単純さに感謝する2人であった。 「で、何て言って付き合い始めたんだ?」 「人の話聞いてたのか、アンタは!!!?」 多分、聞いてないと思います。 |
また数分後。クロロは… 「何だこれは?」 「ロープ」 「何故、首に?」 「首輪代わり」 と、首に縄を巻かれていた。その先を持つのはフィンクス。 「とにかく、シャルの怒りの現段階を知らなくては。それに団長もシャルの怒りがどれ 程か、直接聞くべきです」 「けどいきなり対面させる訳にはいかねぇから、オレと団長は隠れると」 爽やかに、これ以上ない良案と2人は笑顔を浮かべる。 「だから、何故首輪!!!?」 「アンタが飛び出していったら困るから」 「そんな猛牛じゃあるまいし」 「シャルに突進したら、死、あるのみだからな」 『嗚呼、シャル…』 『あんま身ィ乗り出すなって』 岩陰から、こそりと覗くクロロとフィンクス。視界には、パクとシャル。 「そんなにクロロが嫌い?」 「クロロ?誰だっけ、それ?」 シャルは絶対零度の無表情。だがパクは挫けない。 「団長よ」 「ああ。『団長、団長』呼んでるから、団長が本名かと思ってた」 取り付く島もない。あえて名を口にして尋ねたのに。 「想いは本気な訳だし…」 「じゃあパクなら嬉しい?」 「絶対嫌」 本人が聞いている事も忘れ、心より拒絶する。 『そんなに嫌か?本気なのに?』 『本気でもストーカーの執愛を受け入れるかよ』 『ストーカー…』 ファッションをけなされた次にショック。 「もうあの人について話す事はない。オレ、行くね」 「どこに?」 「フェイタンの所。最近黒くて動くモノがダメで…昨日、思わずフェイタンに砲弾倉打 ち込んじゃってさ。今、瀕死の重体なの」 (!!!?) 言われてみれば、昨日激しい轟音を感じたような。 「けど、私も黒服…」 「一瞬危なかったよ。でもパクは、肌色の割合が多かったし」 本家爽やかスマイルを披露し、シャルは冗談めかした本音を告げる。そして立ち去ろ うと軽く手を振る。 「じゃ、ま、…た」 笑顔が、消える。その動作も固まる。 クロロとシャルの視線が、見事に重なっていた。 「…………」 表情も言葉もなく、シャルがロケットランチャー(取り出し先不明)を構える。 「フフ…」 シャルが妖しく微笑んだ刹那、 「逃げて!!早く逃げて!!!!」 「言われるまでもねぇ!!!!」 「く、首!!首が〜ッッ!!!!」 命からがら、彼らはその場から逃げ去ったと言う。 |
何とか、元の部屋に逃げ帰ったフィンクスとクロロ。 「殺される所だった…」 「首が90度曲がった…」 涙しつつ、後方直角に曲がった首を戻そうと四苦八苦。 「ただいま…って、何?その全身エジプト衣装」 「お前だって、白のワンピに着替えてんじゃん」 「死にたくないもの」 「だよな」 このままだとシズクはもちろん、ノブナガだって黒髪との理由で殺されかねない。 「首が〜」 元凶は別の事で泣いてるし。 「フィンクス、お願い」 「OK」 クロロの傍に進むフィンクス。そして 「フィンクス、何を!?」 「良いから、良いから」 「ま、待て!!!!」 ゴキv 「首…」 がく。 「さて、どうする?」 「今すぐ謝らせる。団長1人の我欲で、旅団を殺す訳にはいかないわ」 「ま、最優先は旅団って命じた本人だから、文句言わねぇだろ」 |
フィンクスとパク。2人は、かなりの山場を迎えていた。 旅団が死ぬか、クロロが死ぬか。(何が何でも前者拒否) 「シャルの方は大丈夫だよな?」 「携帯による4時間説得の末の訪問だから…おそらく」 どの道、恐い。 「じゃ、シャルを呼ぶぞ。……、シャ」 「や」 「うわぁあぁッ!!!!」 「何?その悲鳴」 「いや、心の準備を終えてなかったもので」 特にその、いつも通りの笑顔が尚更ホラー。 「うぅ…」 ビク。 背後の黒い人の声に、フィンクスとパクが反応する。 「シャル〜ッ!!!!」 「はい、ストップ」 「ぎゃん!!!!」 突進vを、首縄を引いて阻止するフィンクス。 「この通り、団長も反省してるし…ね?」 「反省…?」 流石にシャルも呆気にとられる。どう見ても無理がある。 「反省してる!反省してるって!!」 意識喪失クロロを、フィンクスが正座に組み立てる。後ろからその頭部に手をやり 「な?」 こくん。 「ほら!!」 「うわー…」 いくら何でも無理がある。しかし、 「本当ですか、団長〜?」 「うぅぅぅ」 楽しそうにシャルがクロロの両頬を引っ張り、回し、伸ばし、意識を呼び戻す。 「ファユ〜!!」 「誰ですか、それ?ほらほら、はっきり言って下さい」 「ヒャル〜!!」 涙ながら、痛みに絶えて頑張るクロロ。 『鬼だ、コイツ!!!!』 『けど団長の方が悪いんだし…』 自業自得とは言え、同情が芽生えてしまう。このまま制止が入らなければ、ずっと続 けられるのは間違いない。まぁ、それでシャルの怒りが破片でも癒されるなら、凄く安 いものだが。 「シャル、あの…せめて謝罪を…」 「謝罪…ねぇ」 シャルが、ようやく手を放す。 「うぅ。顔の形が崩れた…」 「逆に良くなりましたよ」 冷たくシャルは言い捨てた。 「はい、どうぞ」 「はい…。あの、シャル…今度の事は行き過ぎた。恋人いない歴2X年、合コン経験0、 初めての恋。どうやってこの熱情を伝えればいいのか、わからなかったんだ…」 「だからってあそこまでやりますか?オレはもう少しで地球破壊爆弾に手を出す所でし たよ」 (そんな!!!?) 実は世界規模だった危機を爽やか笑顔で語るシャルに、改めて怯える一同。 「そ、その…これからは、抑える。様に頑張る。だからもう1度やり直してくれ」 「本気で反省してます?」 「してる、してる!!だって、シャルに嫌われたままって…スッゴク辛いんだぞ!!!!」 「なるほど」 それなら信じられる。一応シャルも、想いの真剣さはわかっていた。だからより嫌悪 もした。 「なぁ、許してやれよ。旅団やってく限り、絶対付き合っていかなきゃいけねぇんだし。 オレらの為にもさ」 「う〜ん…」 悩む。ストーカー被害とサブリーダー責任の狭間で、グラグラと。 「それにほら、仲良かったじゃん。団長の良いトコも沢山知ってんだろ?」 「お願い、シャル」 「……パクがそう言うなら」 (なッ!!!?) かなり悔しいフィンクス。 『そんなに信用ないか、オレはぁあッッ!!!?』 『落ち着いて!!折角、納得してくれたんだから!!』 ともかく2人の苦心は伝わって、シャルはクロロの瞳をじっと見る。 「シャル…」 「勘違いしないで下さい。あくまで皆の為」 「それでもいい。反省してます…」 「じゃ、『義理』からで良いですか?」 「ああ」 本心から、クロロは嬉しそうに満面に笑った。シャルもかすかに、口元を緩める。 多大に苦労はしたけれど、フィンクスとパクは報われた気がした。何だかんだ言って、 旅団抜きに2人の関係を心配していたのだ。 「あ、そうだ。そのお詫びと言うか、シャルに贈り物があるんだ」 機嫌良く、クロロが告げる。 「はい!金貨500K詰め合わせ!!」 ドン!!とシャルの隣に金貨ギッシリの宝箱が置かれる。 「…………」 一瞬、言葉を失ったシャルだったが、クロロの両手をしかと握ると、 「やっぱり『友達』から始めましょう!!!!」 「うん!!!!」 (えぇッ!!!?) 眩しいまでの120%スマイルが、輝いていた。 「パク…疲れた……」 「私だって……」 こうして今日も、保護者組には『心労』の2文字が付きまとうのであった。 END ☆ |
・後書き どんなブツでしたでしょうか?きしらかずと様のオーダー、 『フィンパク風味の団→シャル(シャル的に義理以下の関係/笑)』を 目指して頑張りました。ただしフィンパクに関しては、本当に『風味』程も出てるかどうか疑問ですが(死) 初めてだからドキドキです…。マイナーばっかり書いてるから(^^;) タイトル…これでもか!!って程悩みました。 内容決まっても、タイトル決まらないから書けない!!って位; そんな時、悩みに悩んでた時川の耳に入ったのが「桃色片想い」。音楽番組で。 もうかなり苦悩してたのでパクり決定v(死)本当は『旅団色』と書いて『クモ色』と読ませたかったです。 実は「愛のうた」は「クモ色〜」前の仮題。あの替え歌誕生の由来はそこです。5分で完成v あ。団長があんな派手な登場を選んだのは、シャルに相手されない寂しさを紛らわす為です。多分。 『クローン技術〜』は、随分前からあの設定を使い回してたので、タイムリーを狙った訳ではないです。 ただクロロパパになる為にはこれ位して頂かないとダメなのです(笑)もちろん全フィクションです; ちなみに、時川版シャルは決して守銭奴ではないです;ほ、本当ですよ!!(必死) 以上、無駄に長くて重いヘボ文ですが、楽しいと笑って頂ければ光栄ですvvv リクが守れている事を願いつつ…、でわ☆ |