「異説・幻影旅団」

 ウボォーの鎮魂歌を奏で終えたと思ったら、今度は更にあと5人死ぬという、
何とも不吉にコメディチックな空気流れる旅団アジト。
「…はぁ。今度は、1万人殺さなきゃならないのか」
「何て事を言うんだ、団長!!!!」
 フィンクスがとっさにツッ込む。
「だってそうだろ。2千人×5人=1万人」
「計算の話じゃねぇよ!!!!」
「安心しろ、お前の墓はピラミッド仕立てにしてやる」
「しっ、死なないやい、死なないやいーーーーッッッ!!!!」

 フィンクスは泣いていた。
「落ち着きなよ、フィンクス」
「ンだよ、シャル。お前も悔しくないのか?死ぬ事確定されたんだぞ」
「冗談に決まってるじゃない。団長がそんな事、本気で思う訳ないよ」
 クス、とシャルが笑う。
 クロロも、見透かされていた事に満足気な笑みを浮かべている。
「だって団長、生来のメンドくさがりだもん。一気に6人も欠けたら楽出来ないから、
 それだけは命を賭けて阻止しようとするよ」
 さらりと言ってのける。
「シャル……」
「あ、はい。何ですか、団長?」
「お前…、オレをそんな目で見てたのか?」
本当の事じゃないですか」
「うぅ……」
 何気にショックなクロロ。
 シズクが、ポツリと呟く。
「ほら…。団長がギリギリまで団員に任せっきりで、
 自分はアジトでビール片手に読書なんて事してるから…」
「お前、ホントに毒舌だな」
「別に。私もシャルも、本当の事しか言ってないもん」
 悪びれず、シズクがフランクリンを見上げる。
 打ちひしがれるクロロ。うつむいたまま、
「フランクリン…」
「はっ、はい」
「後で…話がある」
「はい……」
 クロロの声は、低く冷たかった。
 明らかに、『今までどういう教育をしてきたんだ?』と裏に込められていて。
「にしても、わずか1週間足らずで半分なんてね…」
 予言を見つめながら、マチが普段よりトーンを下げて零す。
「そうだよなぁ。何と言っても、オレらはクモだからな」
 寂しげに、ノブナガが頷く。
 今思えば、いや思わずとも、全てはウボォーの死から始まった様に思える。
 クモ設立前からの、大切な親友の死から。
「って割に、2ショット率はシャルの方が多かったよね。
 会話なんて、原作では皆無だったじゃない」
 グサッ!
 シズクの指摘が、ノブナガの心を刺す。
「おまけにあの腕相撲シーンまで、2人が親友だったなんて空気も表現も何も無かったし。
 まだ、シャルならわかるけど」
 グサグサッ!!
「ホントに、仲良かったの?」
 
ズシュゥウウゥゥゥウゥゥゥッッッ!!!!
 『刺す』どころか、微塵に切り裂かれた心。
 今の快心の一撃が、ノブナガのトドメとなった事は言うまでも無い。
 その哀れなノブナガの様子を見ながら、
フランクリンは心の奥底から、詫び倒し続けるのだった。
「ああ、ウボォー…。オレは…オレは…お前の親友で良いんだよな…?
 オレの思い込みなんてオチで終わらないよな…?」
「どうするの!?ノブナガ、部屋の隅で『ウボォーとオレ』ってテーマで、
 和歌書き始めちゃったよ!!」
「私に相談されても困るわよ…ッ」
 コルトピが必死に首を上げて、パクノダに訴える。
 ただでさえ薄暗い部屋の隅、ノブナガは闇よりもなお深い、漆黒の影を背負っていた。
 音速で筆を滑らせて行く。
「ああ、せめて…お前がオレの親友だと証言してから逝ってくれてたら…」
 すすり泣く。
『いや、親友だぜ、ノブナガ』
「そう。そう言ってから、向こうに…」
 ふと、ノブナガの動きが止まる。
 しかしすぐに首を横に振る。
「ああ、いけねぇ。ウボォーの幻聴まで聞こえ出すなんて…」
『いや、幻聴じゃねぇんだけど』
 目の前、うっすら透過色のウボォーが軽く手を振っている姿が見える。
「ああ、もう!!シズク、お前の所為でウボォーの幻覚まで見えちまったじゃねぇか!!」
 振り向き、怒鳴る。
「………………」
 全員が、ノブナガの方を向き、呆然としていた。
「?どうした、お前ら?団長まで」
 シャルが、感情を置き忘れた様な声と表情で、ゆっくりとノブナガの背後を指さす。
「幻覚じゃないよ。だって……」
 シャルは一瞬ためてから、はっきりと告げた。
「オレたちにも見えるもん、ウボォーが」
「は?」
 そう言えば、背後に念に近くも異なる、実体の無い気配を感じる。
 更にゆっくりと、ノブナガは振り返る。
『よっ!』
 目の前に、見覚えのある身長238cm、体重180kgがいた。
 全員の耳に、鮮明に聞こえてくる懐かしい声。
「うっ………」
『久しぶり…って言うのか?2、3日ぶりでも』
「うわぁぁああぁぁぁあぁぁッッッッッッ!!!!!!!!」
 この日、ヨークシンは謎の大震災に見舞われた。

−−−−−

「……で、どうしてこうなったんだ、お前?」
 全員、言葉無くウボォーを見つめていた。
 無理もない。死んだはずの人間が、目の前で座っているのだから。
『いやぁ、それが気づいたらココに来ちまってた、って言うのか?鎖野郎に殺られて、
 ああ、オレ死んだんだなって思ったら、何か妙な気分になって』
「妙な気分?」
 クロロが、不思議そうに返す。
『ああ。何か、生きてた頃と同じで同じじゃねぇって気分。
 んで、目ぇ開けたら、ココに来てたんだ』
「つまりお前…成仏しそこなったって事か?」
 あんなに苦労したのに、という目でウボォーを睨むクロロ。
『いや、違うみてぇ。1回、向こう逝ったけど、戻ってきちまったって感じ』
「わかった!オレたちの事が心配だったんでしょう!!」
 嬉しそうに、シャルが笑った。
 ずっとウボォー見ている内に、死んでたって関係ない、という結論に達したらしい。
 それは、他の団員たちも同じだ。
 今、ウボォーが目の前にいる。
 その事実だけが全て。団員たちは、割と素直に受け入れた。
 元より、何でもあり的集団だった事が手伝って。
「もう恐くないからね。だって、ウボォーはウボォーだからさ」
 シャルの言葉に、全員がうなずく。
 照れくさそうに、ふん、とウボォーは顔を背けた。
「にしてもお前、死んでも戻ってくるなんて、相当ふてぶてしいな」
 笑いながら、イヤミを言うノブナガ。
 何より、『親友』と言ってくれた事が嬉しかった。
「触れるんだ。透けて見えるって事以外、生きてる時と変わらないんだね」
 物珍しそうに、シズクがウボォーの身体を何度も叩く。
「あ。なら、ウボォーに鎖野郎の事教えてもらえばいいのよ」
「そうか、なるほど!」
 パクノダの言葉を、名案と賞賛するフィンクス。
「これで簡単に予言回避じゃねぇか。オレもピラミッドに入らずにすむし」
 笑顔のフィンクス。
(気にしてたのか…)
 マチが、心の中でつぶやいた。
 期待と喜びの声が広がる。
『水差す様で悪いけどよぉ……』
 だが、ウボォーは、本当に申し訳なさそうに言った。
『鎖野郎の事は、何も伝えられねぇぜ』
「えっ!?なっ、何で!?覚えてないの!?」
 シャルがすぐに確認する。
『いや、覚えてる』
「じゃあ、何で!?」
『禁止コードだからだよ。あ、もちろんパクが触っても、記憶は読み取れねぇからな』
「え〜ッッ!!」
 不満。
「何言ってんだ、ウボォー。オレたちはクモだぜ!禁止コードなんて関係ねぇだろ!!」
 ノブナガも、不満を隠す事をしない。
「いいから、言ってみろって!!オレたちゃ何でもアリのクモなんだから!!!!」
 ウボォーは返事に困った。元々、口が巧い方ではない。
『わかったよ。口で説明するより、やって見せた方が早いからな』
 しぶしぶ承諾する。“無駄だと思うけど”と付け加えて。
『いいか?言うぜ』
 耳を澄ませて、うなずく団員たち。(耳掃除済み)
『鎖野郎の名は…』
 ギュオン!ギュオン!!ギュオォォオオォンッッ!!!!パラリラパラリラ〜♪
『で、能力は…』
 ワンワンッ!ギャウン!!ワオーンッッ!!!!ニギャァァアァアァッッッ!!!!
『なんだけど……』
 突然の大騒音に、耳をふさいで苦しむ団員たち。
『分かったか?』
「分かるかぁぁああぁぁあぁああぁッッッ!!!!」
 団員たちは泣いていた。(シャル&シズク以外)
『だから無駄だって言ったろうが』
「ああッ!そうねッッッ!!!!」
 見事な結束を感じさせる、旅団ハモリ絶叫だった。

−−−

「なるほど…これが禁止コード…」
 耳鳴りが治まった頃、クロロが耳から手を離しながら遅すぎた了解をする。
『そ。オレが今後の内容に関わる事言おうとすると、
 必ずああいった邪魔が入るようになってんの』
「なら、絵に描くとか道案内をするというのは?」
『やっても良いが…どうする?』
「いや、いい……」
何か嫌な予感がするから。

−−−−−

「そう言えば、霊体でも、念は使えるのか?」
 ふとした疑問。ノブナガが尋ねる。
「それは確かに気になるな」
 フィンクスも他の団員たちに、気になるだろと同意を求める。
『ああ。使えるぜ。生きてた頃と全く同じによ』
「本当か?凄いじゃないか」
 クロロが素直に感心する。
「壁抜けも出来る。自由に姿も消せる。そして念も使える。
 これほど頼もしい事はない。1度死んでいる訳だから、何も恐れる事はないしな」
「そうとも限りませんよ」
「何故だ?シャ…、ルッ!?」
 驚きの声。クロロだけでなく、全員が目を見張った。
 シャルは、僧服を完全武装で着ていた。丁寧に笠まで被って。
「いくよ、ウボォー」
 和風100%のなりで、シャルは銃を取り出す。そして発砲されたのは、銀の銃弾。
「……」
 鋼鉄の肉体に当たり、跳ね返る銃弾。
「次はコレ!」
 にんにく。
 跳ね返る。跳ね返る。
「じゃあ、十字架は!?」
『いや、あの、シャル?お前…オレをドラキュラと勘違いしてないか?』
 相変わらずだな、お前、とウボォーがシャルの肩に手を置こうとした時、
「なら聖水」
 
ジュ…ッ。ウボォーの右腕から煙が。
『あだだだだだだだだ!!!!腕が、腕が消えるッッッ!!!!』
「ウッ、ウボォーッッッ!!!!」
 痛がるウボォーに、心底焦って駆け寄るノブナガ。
「ついでに御札」
『うわぁぁぁぁッッッ!!!!腕がッ!!また腕がぁぁああぁあぁッッッ!!!!』
 今度は左腕から煙が上がる。
「うわぁああぁぁぁあぁッッッ!!ウボォー、ウボォーッッッ!!!!」
 ノブナガは半狂乱に近かった。
「最後にお経。がんじ〜ざいぼ〜…」
『ぐわぁあぁああぁぁッッッ!!耳が、耳がッ!!身体が消えるぅぅッッッ!!!!』
「バッ、もっ、もう止めろ、シャル!!!!」
 ウボォーもノブナガも泣いていた。
「うん。もうネタ切れだし止めるよ。ゴメンネ、ウボォー」
 極上天然スマイル。
「でも、これで弱点が出来てしまった事がわかりましたね……」
「そうだな…。しかし……」
 パクノダに同意しつつも、クロロは考える。
「“しかし……”、何だ?団長?」
 フィンクスが聞く。
「ウボォーの能力は生前そのままだ。聖水にしても御札にしても、避ければ済むだけの
事。経にしても、読まれる前に相手を殺すか、逃げればいい。簡単な事だ。何と言って
も、オレたちはクモだからな」
「なるほど!そうすりゃ、オレたちはずっとウボォーとクモやってけるって事だな!?」
 嬉々として、ノブナガが拳を握る。ただし1番喜んだのは、ノブナガではない。
「そう。幻の様に現れ、影の様に消える。これこそまさに、真の『幻影』旅団!!!!」
 
ズガァアアァァアァァァンッッッッッ!!!!
 団員たちに走る衝撃。
 クロロは、本当に嬉しそうに大きく両腕を広げていた。
 基本的にクロロは、珍しいモノ・面白いモノが大好きだ。
「死後もこの世に留まれるって事は、オレたちは永遠にクモをやれるという事だ。
 つまり、クモは永遠に生き続ける」
「確かに霊魂というものは、その本人の望む年齢時の姿で現れる事が可能と言いますからね」
 シズクが本片手に告げる。
「そうなの?シズク」
「うん。確か、そう書いてた」
「でもオカルト本なんて、書いたヤツによって大分違うからねぇ」
「けど、私はシズクの言う通りだった方がいいわ。いつまでも若い姿でありたいから」
「アタシだって書いたヤツによって内容が違うと言っただけで、
 若い姿でいたくないとは言っていないよ、パク」
「やっぱり、歳はとりたくないもんね」
「うんうん」
 霊魂の話だったはずが、美容の話へと移っていく女性陣。そんな彼女達を見ながら、
(これだから女ってヤツは……)
 一方男性陣の脳裏には、お約束の言葉が自発的に浮かぶのであった。
「あ。でも団長」
「どうしたシャル?何か気になる事でも?」
「はい。何十年後もクモをやるって事は、もしかして……」
 シャルは、右人差し指を頬に当て、語り始めた。

−−−−−

 ココから先は少しだけ、セリフのみで進行します。決して、想像してはいけません。
 改めて言いますが、私も旅団大好きです。

クロロ「皆。今日は、高級ゲートボールセットを盗むぞ」
フラン「分かった、団長」
ボノ 「ところでマチさんやぁ、晩ご飯はまだかいの〜?」
マチ 「嫌だね、ボノさん。さっき食べたばかりじゃないかね」
ノブ 「大した出番もセリフもなく、孤独だったから、すっかりボケちまってよぉ」
クロロ「それじゃ、そろそろ行くか」
フラン「ああ」
 ゴキッ!
フラン「うぅッッッ!!こ、腰が…ッ」
ノブ 「大丈夫か、フランクリン。どれ、オレの方に掴まりな。…よっ、と」
 ゴキゴキッ!
ノブ 「うわぁああぁぁッッッ!!オ、オレも腰がぁあぁぁあぁッ!!!!」
クロロ「大丈夫か、お前ら…、うッ!?あ、あ、あ、足が…つった……」
 阿鼻叫喚の世界。
マチ 「だっ、大丈夫かね、皆!?しっかりしとくれよッッッ!!!!」
ボノ 「マチさんやぁ、晩ご飯はまだかいの〜?」
 わいわいわいわい……。

−−−−−

「って事になったりしませんか?」
「怖ーーーーーッッッ!!!!!!!!」
 想像してしまった全団員が、その場で関係ないのに耳をふさいだりして、もだえ苦し
んだ。おまけに滝涙を流しながら。
「シャルーーーーッッッ!!!!何て事を考えさせんだ、お前はぁッッッ!!!!」
 泣きながらフィンクスが、シャルに掴みかかる。
「いつかは起こりうる事じゃないか!」
「歳取ったからって、そんな脆くなるか!!
 ゼノみたいに、生涯現役でいくに決まってんだろ!?オレたち旅団だぞッッッ!!!!」
「けど万が一って事があるしね」
「じゃあ何でさっきの想像の中に、お前の姿が無かったんだよ!!!?」
「だってほら、オレ、死ぬかもしれないし」
 きゃ
と笑うシャル。
「逃げやがったな、お前!!逃げやがったなーーーーッッッ!!!!」
「違うよ!オレはただ、最悪の事態を考えただけだよ」
「うるせぇッ!!」
 シャルの笑顔に、フィンクスは心から叫んだ。
「死なせるかぁっ!!絶対にお前だけは死なせねぇッッ!!!!
 命に代えても生き延びらせて、お前にも老後の悪夢を嫌というほど見せてやるッッッ!!!!」
「でも、オレの命よりもクモを生かす事を優先しないと」
「この際、お前を選ぶわぁッッッ!!!!!!!!」
 何、もっともらしい事言ってんだ!!と付け加え、全団員の心情を代弁するフィンクス。
「フィンクスの気持ちは嬉しいけど、オレたちまだそんな関係じゃないし…」
 フィンクスから顔をそらし、頬に手を添えて照れるシャル。
「無理に話題を転換しようとすんじゃねぇぇええぇえぇッッッ!!!!」
 ぎゃいぎゃいぎゃいぎゃい……。
 これが幻影旅団の姿だろうか。
 そんな疑問が脳裏をよぎってしまうほど、冷静さを失って、もめにもめる団員たち。
その様子を、ただ1人“どうしよう…”という表情で見つめるウボォー。
 ウボォーには、どうしても最後に言わなければならない事があった。
『……あのよぉ』
 ぎゃいぎゃいぎゃいぎゃい……。
 届かない言葉。
『実はオレ、もう帰んなきゃいけねぇんだけど…』
「えっ?」
 ぴた。
 一瞬にして、団員たちの動きが止まる。先の無視は故意だったのかと思わせるほど、
息を合わせて。
 まぁ、ウボォーは旅団のそういう所を知っているので気にしないが。
「かっ、帰るってあの世にか!?」
 ノブナガが、真っ先に口を開く。
『ああ。そろそろ時間だしな』
「『時間』とはどういう事だ?お前は確か、向こうの事は覚えていないと…」
 言葉の矛盾を、クロロが指摘する。
 団員の視線を集めながら、ウボォーは申し訳なさそうに、きっぱり告げた。
『あれ、嘘』
「嘘ぉッッッ!!!!!!!?」

 絶叫。
 全団員、予想もつかなった返事に、驚愕する。
「そんなッ!!ウボォーがオレたちにも見抜けない嘘をつけたなんて!!!!」
「シャル、驚くところが違うッッッ!!!!」
 マチがツッ込む。
「ちょ、ちょっと待て。嘘とはどういう事だ?何故、そんな事をしたんだ?」
 状況を把握しようと、クロロは冷静さを保つ。
「そうだぜ、ウボォー。オレたちは、鉄の結束を誇るクモじゃなかったのか?」
 納得できない。ノブナガからはそんな様子がにじみ出ていた。
 ウボォーはどう説明するのが1番いいのか、言葉を慎重に選びながら答える。
『それが…決まりっていうか、ルールなんだ。
 オレがココに来れたのは、それなりに人気があったからでよ。
 その人気、つまり、オレの再登場を願う気持ちっつうのか?
 それがココに来る為の……燃料?…みたいなもんになるらしい』
「それで、お前がココに来れた訳か」
『ああ』
「でも、何で嘘つく必要があったの?」
 シャルが不満を漏らす。
『頼まれたんだ。お前らが、ちゃんと覚えててくれてるか知りたいから、って』
「誰から?」
『アイツらから…』
「アイツら、って?」
 団員たちの反応に、ウボォーは少し間を置いて、衝撃の事実を述べる。
『旧4番と8番と…』
「うわあぁああぁああぁぁぁッッッ!!!!!!!!」

 ウボォーの言葉をかき消す様に、全団員は耳を押さえて青ざめた。
(わッ…)
 心で、鉄の結束を疑わせる本音を叫ぶ。
(忘れてたぁあぁぁああぁぁッッッ!!!!!!!!)
 そういえば、ウボォーの時ほど派手に鎮魂歌を奏でるも何も無かった気がする。
『ちなみにアイツら、この様子全部見てるから』
「そんなッッッ!!!?」
 ずぅぅううぅぅうぅうぅぅん。
 激しくも静かな動揺と衝撃。
『オレが現れた時に、自分たちの事も聞かれるかどうか知りたいから嘘ついてくれ、
 って不安がってよぉ。心配すんなって言ったのに、アイツら、台本まで用意してさ』
 ウボォーは真実も知らず、満面に笑っていた。
『表に出た言葉だけが全てじゃねぇのにな。今でも覚えてるだろ?皆』
「えっ……、そ、それは…もちろんだ。な、なぁ?お前ら」
 クロロは訴えを込めて、団員たちを見る。
「そ、それはもう…」
 今の今まで、忘れていたけど。
『だろ?心配する事ねぇのにな。ま、結果、嘘ついて試す様な真似して悪かったな』
 ウボォーは心の底から信じていた。
 在団員が、今でもちゃんと欠けた仲間を覚えていると。
「だ、だだだ、だけどよぉ、だからって急いで帰る事ねぇだろ?
 何で、もういられねぇんだよ?」
 話題を転換しつつ、別れを惜しがるノブナガ。
『燃料切れ。安心しろって。また貯まったら来るからよ。
 それに回想とかでアイツらも登場出来たら、今度は一緒に来れるかもしんねぇし』
「い、いや、それは……」
 恐らく気づいてないのはウボォーだけだ。
 真実を知られてしまった今、再会出来ても互いに気まずい。あまり会いたくない。
 ウボォーはよっ、と立ち上がる。
『じゃ、オレ帰るな。ま、何十年かしたら、嫌でも会えるだろうし』
 笑いながら、いまだ衝撃の渦中にある団員たちの雰囲気も理解せず、
ウボォーの身体は光に包まれていく。
「まっ、待て!1人だけで納得して、この場を放置して帰るな!!」
『あ、そうそう伝言』
 しかし哀れなり。届かぬクロロの引き止め。
『『昨日は友引』だってよ。じゃあな!』
「だから、勝手に自分の中で完結させるな!!っていうか、頼むからまだ帰る…な……」
 完全に姿を消したウボォー。
 その場にヒザをついて座り込むクロロ。
「ウボォー…。アイツ……なんて……」
 静かに、フィンクスが切り出す。
 全員が、心で続けた。
(自覚なく、さらりと不吉な言葉を残していくんだぁああぁあぁあぁッッッ!!!!)
 彼らは泣いていた。
 単純一途。
 それはウボォーの長所でもあり短所でもあった事を、彼らは今更ながら思い知らされる。
 知らない事は幸せであり、罪だと。
 シャルは、例になく無表情で呟いた。
「団長…。オレ、絶対死にたくありません……」
 フ…、と半ばヤケ気味に微笑むしか術のないクロロ。
「そうだな…。合わせる顔ないもんな……」

 その後、旅団アジトでは念仏を必死で暗記する彼らの姿が、確認されたという。

END



・後書き
・本当に、すみません!!!!と、時川も…
旅団Fanですよ…、ホント…。(びくびく)
今回の話は、ネタは5月上旬、書き上げ(仮)は5月下旬。そして修正(半)は6月下旬という、
時差ありまくりで、時川自身、何でこんなネタを思いついたのか、わからないモノだったりします(死)
多分…、老後の旅団?(←えー!?)それとも、旧4番と8番とその他?
あまりにいまいちな作品な為、途中で目も当てられなくなり、
推敲もあまりしてなかったりします;いや、してないのは途中だけなんですけど;あぅぅ;

ちなみに、老後のビジョンには、一応死の予言が出てた(もしくは出てる可能性のある)団員は、
話には出てませんが、ビジョンの中にはいたんです。シャル以外(笑)

久々に最凶ボケをかまして、みんなを泣かせるシャルを書けた気がします。
少なくともギャグ度は高いかと。それだけ満足


最近ギャグが続いてる気がするので、来週辺りはシリアスにするかもしれません。
どうか今後も、とてつもなく広い心で、バカ愚者・時川をお許しいただけたら光栄です。でわ
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