旅団アジト。 何故か全団員が、緊急召集された。 そして、あの男により下される命令。 「合宿をしよう」 「クモ緊急強化合宿」 透き通る様な、まぶしい青空の下。聞こえてくる心弾ませる波音。 旅団は今、海にいた。 「急に“合宿”っつうから何だと思えば、ただの海水浴じゃねぇか」 内心、格好と裏腹に、呆れ口をたたくノブナガ。 「いいじゃねぇか、たまには。悪かねぇだろ」 「まぁな」 完全な海水浴ルックで、ノブナガは笑ってウボォーに答えた。 「それにしても…私たち以外、人一人いませんね。ココ、名所ですよ?」 パクノダが疑問を口にする。 この海があるのは、常夏でリゾートの名所、年中旅行者が絶えない事で有名な場所。 「簡単な話だ」 短く、クロロ(髪降し)が言う。 「共同更衣室で着替えていたら、蜘蛛のイレズミに、皆逃げてしまった」 「じゃあすぐに…賞金首ハンターが集まってくるんじゃ…?」 「そうだな、その時は…」 「青い、それは真っ青な海。しかしある時を境に、一面真紅に染まるという現象が起 こり始めました。いつしかその海岸を人々は、“血染め海岸”と呼ぶ様になりました とさ…(ホラー調で)」 「と、いう事になるだけだ」 パクノダの質問に、見事なコンビネーションで答えるクロロとシャル。 「つまり全部返り討ちって事ですね」 あくまで冷静に、パクノダは了解した。 「やっぱり、海といえばスイカ割りだと思うんだけど」 「スイカ割りねぇ…」 にこにこ笑顔のシャル。しかし、他の団員たちはあまり乗り気でなかった。 「どうしたのさ。折角の旅行だよ。楽しまないと」 「ああ、もう旅行って認めるわけね」 呆れ半分に、フィンクスが返す。 「だって屋台も何も、み〜んな逃げちゃったからさ、もうスイカ割りくらいしか出来な いんだもん。スイカなら、大量にあるよ。団長が、今日の為に盗ってきたから」 (あの人、ずっと企画してたのかッッッ!?) 「でもな、シャル…」 ポンとシャルの肩に手を置くウボォー。 「目隠しぐれぇでわからなくなると思うか?スイカの位置」 それが、団員たちがスイカ割りに乗り気でない理由だった。 「そうだよ。どこにスイカがあるかがわかるスイカ割りほど、ツマンないものはないよ」 マチが補足する。 「じゃ、じゃあ…」 白いシャツの懐から、ネコケータイを取り出すシャル。 「オレがみんなを操るから、みんなは少し抵抗してよ。そうすれば、オレの力とみんな の力のぶつかり合いで、動きの楽しいスイカ割り出来るから」 沈黙の一同。しかしすぐに、全員が声を合わせてただ1言、こう告げた。 「絶対却下」 「う……ッ」 団員たちの冷たい視線に、シャルの声がつまる。 「うわぁぁんッ!!団長に言いつけてやるッッ!!!!」 「ガキかお前はぁッッッ!!!!」 その場から駆け出すシャルに、フィンクスは反射的にツッ込んだ。 |
昼。流石に、旅団と言えど腹が減る。 「そろそろ…お腹空きましたね、団長」 ビーチパラソルの下、シズクが言う。 同じくビーチパラソルの下、読書しているクロロに。 「お昼、どうするんですか?この一帯、人いないから、何もないですよ」 「大丈夫さ。全て、シャルに一任してある」 「それが一番、安心出来ねぇ気がするけどな」 近くにいたフィンクスが、不安げにシャルたちを見やった。 シャルは、団員たちに何やら指示している。 「じゃ、これから昼食を作るよ。昼はオレが味付け担当するから、安心して」 「でも材料は?スイカみたいに、デメちゃんの中にあるの?」 コルトピが、海という言葉とはおよそ遠い格好で尋ねる。 「ううん。やっぱり旅行というからには、その土地の新鮮な物を食べないと。って訳で」 ウボォーを見る。 「海入って捕って来て、魚。っていうか海の幸」 「出来るか!オレを何かの動物と勘違いしてんじゃなぇだろな!!」 第一、こんな浅瀬にいるか、と反論する。 「200海里までは浅瀬だよ!!ウボォーにとっては絶対!!!!」 どきっぱりv 「出来ないの!?クモともあろう漢が!!!?」 「うッ…」 “漢”。その言葉にウボォーは弱い。苦悩。困惑。葛藤。そして… 「……わかった!!やってやるぜ、チクショーッッッ!!!!」 半ばヤケになりながら、ウボォーは泣き叫んだ。そのまま、海へと駆け込んでいく。 「たくさん捕って来てね〜v」 笑顔で手を振るシャル。そんなシャルを見ながら、団員たちは青ざめていた。 (コイツ、こんな爽やかに…。鬼だ、コイツ鬼に相違ない…!!) さめざめ。 「それじゃ、みんなはバーベキューの準備ヨロシク。調理道具は、オレが用意するから」 それからは早かった。あっという間に準備完了。 その土地の新鮮な物をと言ったくせに、シャルは野菜&果物はきっちり用意していた。 「じゃ次、いくよ、みんな」 隣りに大量の野菜の入ったカゴを手にしたフェイタンを連れ、コルトピが準備を促す。 「ああ、いいぜ」 「いつでもきな」 ノブナガとマチが、各々武器を手に構える。 「食材・大根!目標・ナベ4!」 コルトピの手から離れた大根は見事、同一曲線上を描きノブナガの下へ飛ぶ。 「はぁッッッ!!」 目にも留まらぬ速さで、大根が同じ大きさに切られていく。 「ハッ!」 次にマチが、それらに念糸を通していく。針はそのまま、シャルの目の前にある、様々 なナベの内の“4”と書かれたナベを目指す。 切られた大根たちが、そのナベの上に差し掛かった瞬間、マチが糸を引く。 ドボドボドボドボンッッッ!! 大根全てが、ナベの中に治まった。 「はい、OK。後はそれぞれのナベ、フライパン、網で、オレが調理するよ」 オタマとフライ返しを手に、シャルが笑う。 「いやぁ、相変わらずスゴイ針裁きだねぇv」 「別に。それに、アンタに誉められても全ッ然、嬉しくないわ」 「そんな事言わないでさ、折角のバカンスvボクと2人で一夏のアバンチュー…、ルッ!!」 ヒソカの顔面に、タコがしっかりと埋まっていた。 「悪い。手が滑った」 明らかな嘘を込めて、マチは冷たく言い放つ。 「スマナイね、ウボォー。アンタが捕ってきた海の幸、1個ムダにしてさ」 「いや、別に……」 たった今、200海里の先から海の幸を抱え、戻ってきたウボォーに、マチが詫びる。 ウボォーは、もだえ苦しみつつ顔面のタコと格闘するヒソカを、呆然と見るのであった。 楽しい昼食の終わり。 「ふぅ…。どうやら、お客さんが来たみたいね」 パクノダがビール缶を置いて、実働部隊に笑いかける。 「食後の運動にはちょうどいいだろ。なぁ、ウボォー?」 「ああ。いっちょ殺ってやるか」 まるで余興の始まりとばかり、団員たちは笑っていた…。 その後、このリゾート海岸が“血染め海岸”と呼ばれる事となったのは、余談である。 |
黄昏時。今度は旅団は、自分で自分の夕食を作るハメになっていた。 理由は簡単。 クロロのワガママ…もとい、命令。共同の中での個人を養う、という名目の下の。 「なるほど…それでシャルが“昼は”と言ってた訳か…」 全団員、エプロンまたはかっぽうぎを着用しながら、自らの夕食を作る。 「よっ…と。こんなもんかな」 「相変わらず、何にでも器用だなー、お前」 「だって、何でも出来た方が便利でしょ、この世界」 器用に中華鍋を操りながら、シャルがウボォーに笑いかける。 「でもなー、ウボォーが料理上手いのは悔しいなぁ」 「そりゃオレ、金持たねぇし、美味いもん食いたかったら、自分で作るしかねぇからな」 「コイツの場合、好きな事にだけ飲み込みがいいんだよ。他の事はさっぱいだぜ」 ノブナガが、米をとぎながら割り込む。 「うっせぇなぁ!いいだろ、出来る事が多い方が便利なんだよ、この世界」 「それさっき、シャルが言ってたぞ。似た事を」 別の場所では、こんな場面が展開されていた。 「フランクリン、しょうゆ貸して」 「ああ、いいぞ」 快く、シズクに渡す。 1分後。 「フランクリン、マヨネーズ貸して」 「ああ、いいぞ」 さらに1分後。 「フランクリン、タバスコ貸して」 「ああ、いいぞ……って、タバスコ!?」 何を作っているのかと、不安を伴う疑問が浮かぶ。 またさらに1分後。 「フランクリン、料理作って」 シズクの手には、中央部がまるで強酸で熔かされた様なフライパンが…。 「お前、何したんだ?!」 「えー?普通に料理してたんだよ。フライパンの中に、魚と豆腐と梨入れて、しょうゆ とマヨネーズとタバスコと練りわさび入れて、蒸してたら…」 「蒸す!?」 フライパンでか?!と、驚愕の事実に圧倒されるフランクリン。 だが、それでもフライパンが熔けてしまうだろうか…。 「お前…もう、料理作るな。全部、オレが作ってやるから!」 「うん、ありがとー」 普通に返したシズクを見て、フランクリンは保護者疲れの涙を拭うのだった。 そして別の風景。 「美味しそうだね、マチvボクの料理と、1品取り替えっこしようよv」 「嫌」 「そんな事言わないでさぁ。ボク、君の手料理をぜひ食べたいんだけどv」 「アンタに食べさせるくらいなら……」 しつこいヒソカを、キッ…と睨みつける。 「1週間放置して腐らせて、ねずみやゴキブリの餌にした方がまだマシよッッッ!!!!」 「もぅ、冷たいなぁ。ボクの料理、美味しいんだよv」 ヒソカが指さしたナベからは、不気味さ200%のオーラが漂っていた。可能ならば、 半径1mだって近づきたくないと、本能が訴えてくるほど。 「アンタ……殺すよ」 そう言ったマチの表情は、恐ろしいほどに冷たく、本気だった。 最後の大トリはもちろん、この方。 「フィンクス、味見してくれないか」 「いいぜ。でも団長の料理なんて…何か、すっげぇ意外な気分だな」 「独身だからな。料理の1つも出来なければ、暮らしていけない」 クロロが、弁当箱を開ける。 「ッッッッッ!!!?」 そこには、キレイに敷き詰められた、黒コゲ発ガン性物質の塊が…。 「あ、あの団長、コレは…?」 「ハンバーグと豚の角煮とおにぎりとイチゴだ」 「イチゴッッッ!!!?」 フィンクスは苦悩した。 (ハンバーグがこげるのはまだわかる。だが煮物でこげるか!?それにおにぎり!?炊飯器 で炊いた米で!?いや、炊き上がりはまだ白かった。それに……イチゴぉッッ!!!?) ※イチゴは水洗いだけでOKでした。 「さぁ、食え。美味いぞ」 動じる事無く、クロロは差し出した。そう、彼にとってコレは普通なのだ。 「は、はぁ……。じゃあ、まずは角煮から…」 ガリ……ッ。 煮物でこの食感はどうだろう、というより先に訪れる驚き。 「角煮だ……」 確かに、ブタの味がした。それも長時間旨みを吸い込んだブタの。 「じゃ、じゃあイチゴは!?」 ガリ……ッ。 「イチゴだぁああぁぁぁああぁぁッッッッ!!!!」 しかも甘酸っぱい。 (た、確かに美味い…。見かけにこだわらねぇなら。だがなんだ?この、たった2口し か食べてねぇのに、体内から湧き上がってくる……気持ち悪さは…) 『フィンクス』 シャルが、こっそりとフィンクスの手を取った。手の内に、何か錠剤の感触がある。 『コレ、オレが調合した特製胃薬。後で飲むといいよ』 『シャルぅ〜』 この時、フィンクスにはシャルに後光が射して見えたという…。 |
「じゃあ、オレはトイレに行ってくるが…寝ろよ、お前ら」 パチリ。 大部屋の電気が消される。そのまま、クロロは出て行く。 「って、コレ…修学旅行じゃねぇのか?」 「こんな大部屋がある旅館を、わざわざ見つけてくるなんて…」 「じゃあこの場合、団長は見回りの先生ってトコか?」 パチリ。 再び明かりが部屋を照らす。 「じゃあ、修学旅行らしく、枕投げでもやってみようよ」 にこにこ。シャルが笑う。 「子供じゃあるまいし……なぁ」 「イイじゃない。ほら、たまには若かった頃を思い出してみるとかさ」 「お前、いくつだよ…」 ツッ込む、フィンクス。 「けど、シャルの言う事も一理あるんじゃない?」 「は?シズク、お前、何言ってんだよ。枕投げだぜ?」 「楽しそうだよ。私、枕は投げた事ないもん」 “枕は”という部分をツッ込むべきか。だが、意外と他の団員も乗り気になる。 「ま、団長が帰って来るまでのオフザケって事で」 そして、今世紀かなり描いてみたいモノ受賞光景。旅団による枕投げが始まった。 「ほれ!」 「わッ!?やったな!今度はこっちからだ!!」 「いたッ!ちょっと、どこ投げてんのよ!?」 「痛ッ!くそ…、コレでもくらえッッッ!!!!」 次第に加熱していく、枕投げ。 「テッメェ!!今、本気で投げやがったな!!!?」 ドッゴーンッッッ!! 壁を突き破っていく、元・枕。 「ああ!!もう、あったまきた!!!!これでもくらえッッッ!!!!」 「んだとうッッ!?」 ドッゴーン!!ドッ、ゴォォオオォォォオォォォンッッッ!!!! 壊れゆく旅館。彼らは、本気だった。マジギレではないにしても。 「お前ら、何やってるんだ!?」 異変を察したクロロが、駆けつけてくる。 「落ち着け、お前……、ッ!?」 クロロに向かって飛んでくる、大量の枕たち。 「うわぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁッッッッッ!!!!!!!!」 世界広しとは言え、枕に命を奪われかけた男は、おそらくこの男だけであろう……。 |
結局、最後は宴会で締めくくろうと、クロロは予定を変更した。 「やはり夜通し酒を飲む方が、クモらしいな」 「0時就寝を命令した人が何言ってンすか…」 わいわいと、普段の打ち上げ時以上に盛り上がる団員たち。 「ねぇ、フィンクス…」 「ん?どうした、シャル?」 赤い顔で、フィンクスに近づいてくるシャル。 「何で黒ジャージなの?」 「は?」 「赤の方が、燃える青春熱血ド真ん中体育教師っぽいのに」 戸惑うフィンクスを他所に、シャルは続ける。 「何で、初登場時エジプトだったの?被り物、何気にカラフル過ぎるよ」 シャルは真顔だった。 「絶対!フィンクスってスフィンクスから取ってるでしょ!?オレ、エジプト関連物を見 る度にフィンクス思い出して、笑いが出て困るんだよ!!!!」 「失礼だぞ、お前!!!!」 フィンクスは泣いていた。 「そうさ、オレは失礼だよ!じゃなきゃ、盗賊なんか出来ないよ!!だけどね…」 今度は急に怒り出すシャル。 「何で幻影旅団で“クモ”なのさ!!団長のコートも逆十字だし!!クモにすればイイじゃ ない!!訳わかんないよ!!!!」 「かっ、関係ねぇーーーーーッッッ!!!!」 しかし、泥酔模様なのは、シャルだけではなかった。 「う〜ん。またマチに逃げられちゃった…。ま、あの冷たいトコが何とも…v」 ポンポン。 ヒソカの肩が叩かれる。振り返るヒソカ。 「あ、ボノレノフ。どうかしたのかい?」 「いいよなぁ、ヒソカは」 「え?」 「いや、同じ奇抜な服装だってのに、どうしてオレは出番もセリフもないのかなって」 「それは…ボクの方が登場も早いし、それに…」 「オレだってな、別に無口な訳じゃないんだよ!!シャルやシズクやパクやコルトピより もずっと戦闘向きな服装してんのに、さぁ、いざ仕事って時はいつもあいつらに出番が 回ってくる!!不公平だろ!!なぁ、そう思うだろ」 「いや、だから…」 「この格好を止めればいいのか!?フィンクスみたいに、大幅に、前回の服との共通点の かけらもない服を選択すればいいのか!?だがな、大変なんだぞ、この服!!」 ヒソカの意向など全く無視して、強制的にグチを聞かせ続けるボノレノフ。 「1歩間違えればセクハラだと言われ、戦闘中に包帯の1部でも破けた日には変態扱い!! そこからどんどんほどけていく包帯を押さえるのにどれだけの労力を使う事か!!おまけ に風呂上りの苦労なんて、涙なしに語れたもんじゃない!!変に肌を出さず、かつかさば らない様に、何度もほどく、巻くの繰り返し。それでやっと、このミイラだの何だの言 われてる服の完成なんだよ!!!!わかるか!!!?この人知れない苦労!!!?」 「そんな事言われてもだね…」 「いいよなぁ!!そんな奇抜な格好に変態的性格で、語尾にトランプマークまで付けてる のに、出番もセリフも人気もあって!!オレなんて、オレなんてぇえぇええぇぇッッ!!!!」 号泣。おまけに、ヒソカの服をハンカチ代わりに。 何とあのヒソカが、この時ばかりは激しく動揺していたという。 「……………」 無言のまま、飲みつづけるシズク。 「シズク?ツマミ、食べないのか?」 先ほどまではツマミを口にしながら、会話も弾んでいた。だが、今は会話もなく、ツ マミも口にせず、ひたすらビールを飲みつづけるのみ。 「……………」 「シズク?」 フランクリンは今度は、声をかけるだけでなく、肩にも手を置いてみた。 「……………」 やはり反応はない。かに見えた。 パタ……ッ。 「シズク!?シズク!!!?」 急に意識を失い、倒れるシズク。抱きとめるフランクリン。 「……悪いが、先に帰らせてもらう。シズクを送り届けないといけないからな」 真っ赤にゆるんだ顔、ろれつの回らない口調の団員たちに見送られ、フランクリンは 倒れたシズクを連れ、帰っていった。 「それに額のイレズミもわからないでしょ!?おまけにワガママだし!!オレがどれだけ苦労 してウボォーたちまとめてると思うのさ〜ッ!!ねぇ!!聞いてる!?」 シャルは今度は、号泣しながらウボォーたちにグチを叫んでいた。 「アイツ…、泣き上戸でもあったのか…」 遠くで、シャルの被害を受けない様に小さくつぶやくフィンクス。 「意外ですよね、シャルがあんなになるなんて」 「そうか?シャルはベッドの上でも可愛く“鳴く”ぞ」 シラフな顔をして、実はクロロも泥酔していた。 「あの団長…」 「何だ、フィンクス?」 「そこは…激しくツッ込むべきですか?それとも流すべきですか?」 クロロは手にしたビールを全て飲みきると、 「激しくツッ込んでもいいが、この場であんないかがわしい事を口にしていいものか…」 「うわぁぁああぁぁぁぁあぁぁッッッッ!!!!!!!」 聞きたくないと、フィンクスは必死に耳をふさいだ。 |
「シャル…大丈夫か?」 「らいりょうぶらよ〜。まだ飲め…ゆ…も……ん………」 「シャル?」 規則正しい寝息が、背中を通して聞こえてくる。 ウボォーに背負われながら、シャルは眠りについた。 「ったく。限度を考えて飲めよな」 朝日が、東の空を染めていく。夜が、静かに去っていく。 ウボォーは、長くも短い、旅団らしからぬ楽しい1日を思い出して、笑うのだった。 その後しばらく、旅団の名は世間に出なかった。二日酔いが原因で。 彼らは知らない。 ビール缶の“アルコール5%”という文字に続き、粉ほど小さい文字で“と、見せかけ て50%・by時川”と書かれていた事を……。 END ☆ |
・後書き いかがでしたでしょうか?セロ様のオーダー、 『ノブ、パク、フィン、フランクリンが活躍するような小説』を 目指したつもりなのですが。 ご希望にお応え出来ていたら、とても光栄なのですけど…。 書き上げてみて思いましたが、かなり無茶苦茶ですね;話運びもシメも; 長くなりそう(コレでも十分長いけど)だったので、大分削ったからでしょうか?(←文才が無いだけ) 今までの時川SSよりは、ノブ&フランクリンの出番が多かった気がします。ボノは大躍進ですが(笑) 旅団オールかと思いきや、実はフェイタンのセリフが無いという…;名前1回だけ;う〜ん。 最後のビールは、もう“アルコール50%”をビールと言って良いのか疑問ですが、 それくらいのモノじゃないと、酔わないと思うので。ウボォーを見る限り; あ、団長の問題発言は泥酔状態の所為です。真に受けてはいけませぬ(笑) しかし…私は旅団に何をやらせたいんでしょうねぇ…; 喜んでいただける事を願うのみですvvv |